【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は10日で就任2年を迎えるのに合わせ、9日にソウルの大統領室で開いた記者会見で、夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏が高級ブランドバッグを受け取ったとされる疑惑などについて謝罪した。また、昨年の水害で行方不明者を捜索中に海兵隊員が殉職した事故を巡る軍の不適切な対応が隠蔽(いんぺい)されたとの疑惑を巡っては、捜査結果を見極めた上で疑惑が解明されない場合は政府から独立した特別検察官に捜査させるよう要請する考えを示した。
尹大統領は金氏の疑惑に関し、「妻の賢明といえない行動により国民の皆さんにご心配をかけたことに対し、謝罪申し上げる」と述べた。ただ、金氏が輸入車ディーラー「ドイツ・モーターズ」の株価操作事件に関与した疑惑を特別検察官に捜査させるよう野党が求めていることについては、「特別検察官(による捜査)は検察などの捜査に不備があった疑惑があるときに行うもの」として反対の意思を示した。そのうえで、「前政権で2年半近く、事実上私をターゲットにした捜査が行われた」とし、「(捜査を)やるだけやったのにまたやろうというのは特別検察官の本質や趣旨に合わない政治攻勢」と述べた。
野党主導で海兵隊員が殉職した事故を巡る疑惑を特別検察官に捜査させる法案が可決したことに関しては、「捜査結果を見極め、国民が納得できないというなら私から特別検察官(による捜査)を主張する」と強調した。同法案は今月2日の国会本会議で可決しており、拒否権を行使する考えを示唆した発言とみられる。
尹大統領は残り任期3年間の国政運営についても説明した。急速に進む少子高齢化に対応するため、社会副首相がトップを務める「低出生対応企画部(省)」(仮称)を新設すると表明し、政府組織法の改正に向けた協力を野党に要請した。医師不足などの対策として大学医学部定員を2025年度から2000人増やす政府方針に対し、反発する全国の研修医らが2月から職場を離脱するなど医療現場で混乱が続いていることに関しては、「医学部増員を含む医療改革は爆発的に増加する医療需要を勘案するとこれ以上先送りできない課題」と訴えた。
一方、農産物や食品などの価格が高騰していることについては、物価安定のためにあらゆる手段を総動員すると表明した。
今年の米大統領選で政権交代した場合の韓米関係への影響を問われると、「韓米の強固な同盟関係は変わらないと確信する」と表明。対日関係については、「私と岸田首相は互いに十分に信頼し合っており、両国関係を発展させるという思いが十分にある」と強調した。また、「北の核への対応や両国の経済協力のため、インド太平洋地域と国際社会でのリーダーシップのため協力しなければいけない」とし、「さまざまな懸案や過去の歴史が障害になるかもしれないが、確固たる目標志向性を持ち、忍耐すべきことは忍耐しながら進むべき方向へと歩んでいかなければならない」と語った。
ロシアによるウクライナ侵攻を巡っては、「国際法上認められていない違法な攻撃」としながらも、ウクライナに攻撃用の殺傷武器は供与しないという原則を改めて示した。
会見前に発表した国民向けメッセージでは、「今後3年間、国民の声に耳を傾け、より細心の注意を払って国民生活に気を配る」と語るとともに、国民との意思疎通を強化する姿勢を示した。
尹大統領が記者会見を行うのは就任100日を迎えた22年8月以来、1年9か月ぶりとなる。