■脱北するか統一しなければ、財産権行使不可
北朝鮮の子女がAさんの遺産を相続できる根拠は、2012年に施行された「南北住民間の家族関係と相続などに関する特例法」(南北家族特例法)だ。同法によって、北朝鮮にいる子女は相続事実を知った日から3年以内、相続が行われた日から10年以内に相続回復を請求することができる。相続事実を知った日から3年以内でも実際に相続されて10年が経過していれば請求できない。最長10年で請求権がなくなる点は現行民法に規定された通常の相続回復請求期間と同じだ。
南北家族特例法に従い、北朝鮮の子女が相続したAさんの遺産は、裁判所が選任した財産管理人が保管している。北朝鮮住民が相続した韓国資産が北朝鮮に渡り、軍事用途などに転用されないようにすることが特例法の趣旨だ。
北朝鮮の子女が相続財産を直接使用・管理するためには法務部長官の許可がなければならない。特例法は国家安全保障、秩序維持、公共の福祉などを阻害する場合には許可してはならないと規定している。法務部関係者は「相続を受けた北朝鮮住民に財産を直接使用・管理することを認めた事例は1件もない」と話した。
法律専門家は「北朝鮮の子女が脱北し、韓国に来て財産権を直接行使するのが最も早い方法になる」と説明した。ただ、北朝鮮当局も訴訟結果を知っているため、子女の脱北は難しいという見方が出ている。一方、南北統一が実現すれば、子女は財産権を直接行使できるとみられる。
■弁護士受任料訴訟が進行中
北朝鮮の子女は、自分たちの相続訴訟の代理を務めた韓国の法律事務所とも裁判で争っている。法律事務所は北朝鮮の子女の委任を受けた仲介人と「相続割合の30%またはそれに相当する金額を成功報酬とする」「北朝鮮の子女が受け取ることになる相続財産から成功報酬を優先的に支払う」という内容で契約を結んだ。相続額が約196億2400万ウォンに決定し、成功報酬は約58億8700万ウォンとなった。
しかし、子女が成功報酬を支払わなかったため、法律事務所は支払いを求めるいう訴訟を起こした。一、二審は子女が勝訴たが、大法院で判決がやや変更された。大法院は4月4日、「成功報酬契約は無効だが、訴訟委任契約自体は有効なので、弁護士報酬は支払われなければならない」とし、審理をソウル高裁に差し戻した。
イ・スルビ記者