死の峠を幾度も越え、政治家としての階級を高めてきた李代表には最後の目標だけが残った。大統領になることだ。現在の政治情勢で次期大統領の座に最も近い人物が李代表であることは誰も否定できない。彼は巨大野党の支配株主であると同時に、政界最強の熱狂的支持者層を持つ。尹錫悦政権のレームダック化が加速するほど、政局の主導権は議会権力を握る李代表に集中することになる。総選挙が与党惨敗に終わった瞬間から予見されていることだ。
しかし、李代表にはこれまでのどんな峠よりも困難な最終関門が残っている。司法リスクだ。 現在李代表は①大庄洞・柏峴洞事件②公職選挙法違反事件③偽証教唆事件で裁判を同時に受けている。そのうちどれか一つでも被選挙権が剥奪される有罪判決が確定した場合、李代表は3年後の大統領選に出馬できない。法的な関門を突破できるかどうかに李代表の大統領選出馬が懸かっている。
3件の裁判のうち、公職選挙法違反と偽証教唆事件は数カ月以内に一審判決が下され、3年以内に大法院判決が出る可能性が高い。法理が単純で、関連する証拠も明らかだからだ。公職選挙法事件では、李代表が城南都市開発公社のキム・ムンギ元開発第1処長(故人)を知らなかったと発言したのは虚偽だという証言があり、偽証教唆も李代表が偽証を要求したという録音ファイルが確保されている。李代表が切り抜けるのは容易ではない。
裁判が不利に進行している状況で、李代表の今後の対応策は明らかだ。判決を遅らせる遅延戦術だ。175人の所属議員を防弾部隊として裁判所に圧力をかけ、大統領選までに最終判決が出ないように裁判を引き延ばすことだろう。
しかし、いくら引き延ばしても、3年間も大法院判決を阻止することは容易ではない。そうなると、李代表は大統領選を繰り上げる方法を模索するだろう。尹錫悦大統領を任期途中で退陣させ、自分の判決が確定する前に選挙を行うのだ。野党が早くも弾劾だ改憲だと言い始めていることは、大統領選前倒しのための地ならしが目的とみるべきだ。李代表は「朴槿恵(パク・クンヘ)モデル」、すなわちろうそく・弾劾政局を起こし、世論の力で尹大統領を下野させるシナリオを念頭に置いていることだろう。
最高難度のこの戦略が成功するかどうかは、結局尹大統領次第だ。尹政権が現在のように理解困難な国政運営を続け、国民の支持を失えば、李代表の大統領就任計画を助けることになる。相次ぐ空回りで自ら支持離れを招き、支持層にまで背を向けられれば、何が起きるか分からない。7つの事件、10件の容疑で3件の裁判を受けている李代表の最後の「ミッションインポッシブル」は成功するかもしれない。
朴正薫(パク・チョンフン)論説室長