今月16日、京畿道安山市の花郎遊園地で開かれた「セウォル号惨事10周忌記憶式」には野党関係者が大挙参加した。ある野党代表は、支持者に笑いながら手を振った。現場にいた革新系ユーチューバーは「総選挙が終わり、時期もちょうどよい」と言い、笑いながら会場に続々と入場する野党関係者を撮影した。まるで総選挙に圧勝した野党が勝どきを上げる現場のようだった。
これについて、犠牲者が通っていた檀園高校の生徒の母親は「偉い方々にあいさつするため、悲しむ暇もなかった。『(政治家が)よい機会をつくったのだな』と思った」と話した。セウォル号事故10年の企画取材の過程で会った遺族らは「民主党による文在寅(ムン・ジェイン)政権の5年間でも変わったことはない。これ以上セウォル号事故が政治的に利用されないでほしい」という共通認識を抱いていると述べた。
事故直後、民主党は沈没原因を究明し、責任者の処罰を求める遺族のスポークスマンを自任した。全国民主労働組合総連盟(民主労総)、全国教職員労働組合(全教組)、民主社会のための弁護士会(民弁)、全国障害者差別撤廃連帯(全障連)など市民団体も連帯を表明した。文在寅前大統領は就任から3カ月後、遺族らを青瓦台に呼び、真実の究明を約束した。しかし遺族は「その時だけだった」と振り返る。事故原因の調査を担当した船体調査委員会には、民主党の推薦を受け特別調査委員会で活動し、検察改革を叫んだ法曹関係者が含まれた。結局、船体調査委は結論を出せないまま活動を終了した。
2018年に設置された社会的惨事特別調査委員会も2022年に活動を終了したが、セウォル号の沈没原因を巡る疑惑について、まともな結論を出すことができなかった。低い復原力(船体の傾きを元の状態に戻す能力)と操舵装置の異常などを原因と考える「内因説」、潜水艦の衝突など外力による「外因説」の間で対立を埋めることができなかったからだ。ある遺族団体関係者は「まるで潜水艦衝突説が真実であるかのように確信を持っていた。討論する姿勢も見せずにかたくなに押し付け、その結果、委員会は話がおかしな方向へ行った」と批判した。
前政権の5年間、本当の真相究明より政争に明け暮れた民主党と革新陣営の人々は、再び遺族の前に姿を現し、「忘れない」と一斉に真相究明を要求し始めた。民主党は15日、「10年が過ぎた今も惨事の真相究明がなされていない」とし、「セウォル号惨事の真相究明のために先頭に立つ」と表明した。真相を究明する責任があった彼らが遺族の切実な要求を徹底的に無視し、事故から10年目に改めてそれにしがみついているのだ。
しかし、遺族はこれからは未来を見据えたいという。セウォル号事故で父親を失った息子は「文在寅政権の5年間真相究明を求め続けたが、退任するまで一言の返事もなかった。私たちは政治とは関係ない。特定陣営には頼らない」と話した。娘を亡くした母親は「依然政治スローガンとしてセウォル号を利用する人々がいる」とし、「真相究明という見せかけだけのスローガンではなく、本当に国民の安全を守ることができる未来に向けた活動に取り組みたい」と話した。
ソ・ボボム記者