尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と韓国野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が19日に電話で話し合い、来週中に会談することで合意した。2人の電話による話し合いは2022年8月に李代表が共に民主党の代表に就任して以来1年8カ月ぶりだ。当時、尹大統領は李代表の当選を祝い「まずは実際に会って話し合いを始め、今後もたびたび会ってお茶や食事もしましょう」と声をかけた。これに対して李代表も「お心遣いに感謝します。私も大統領の仕事の助けにならねばなりません」と応えた。尹大統領が李代表に対面での会談を呼び掛けたのは今回が初めてで、李代表も尹大統領との単独会談でなければ応じないとしてきた。遅きに失した感はあるが、2人の対面が実現するのは幸いなことだ。
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尹大統領の立場としては、大庄洞問題(土地開発不正疑惑)など7つの事件に関連する10の容疑で起訴されている被告と実際に会うのはそう簡単なことではないだろう。一歩間違えば被告と「政治的な取引を行ったのでは」と疑われる恐れもある。しかし李代表は国会で圧倒的な議席を持つ国会を事実上掌握した多数党の党首であり、この状況は今後4年間変えることができない。そのため尹大統領も現実問題として共に民主党と協力しなければ大統領としての国政運営そのものが難しくなる。
2人が解決すべき懸案は数多くある。大学医学部定員増に伴う医療空白問題をまずは頭を突き合わせ力を合わせて解決しなければならない。物価高と高金利に苦しむ国民の苦痛を和らげる政策も必要であり、さらに国の将来のため避けて通れない労働問題、年金問題、教育問題、規制改革問題などでも話し合いを重ねるしかない。これらの改革は共に民主党の協力なしには一歩も踏み出せない。野党が疑いの目を向ける海兵隊員殉職事件の捜査についても、尹大統領はこれまで何が起こったかを李代表にしっかりと説明し、理解を求めねばならない。外交では米中対立の中で国益を守り、北朝鮮の核の脅威にも対応する必要がある。とりわけ米国でトランプ氏が再び大統領に当選した場合、韓国の安全保障や経済が大きな影響を受ける可能性が高い。共に民主党も安全保障問題や経済政策で反対ばかりするのではなく、協力すべきは協力しなければならない。
2人が会談で一定の成果を出すには互いに一歩ずつ譲歩する準備もしておかねばならない。共に民主党は選挙で圧勝した直後からコメの超過生産分の政府買い上げを義務付ける糧穀管理法改正案、「黄色い封筒法」(労働組合法第2条と3条の改正案)、「放送3法」(放送法・放送文化振興法・韓国教育放送公社法改正案)など尹大統領が拒否権を行使した法案だけを再び国会に提出する構えだ。また尹錫悦政権を攻撃する複数の特別検事法を成立させ、国会の17の常任委員会も全て独占する方針も明確にしている。これでは協力を進める考えがあるとは言えないだろう。
今後しばらくは、与野党対立を誘発する事態だけは互いに自制しなければならない。李代表は多数党の党首として、尹大統領との会談には国政運営に連帯責任を負う自覚を持って臨むことが必要だ。尹大統領も選挙での惨敗を受け「より謙虚かつ柔軟な態度を持って意思疎通を進めたい」と述べた。まずは国会での同意が必要な首相人事などで2人は意見交換が可能だろう。順調に行けば尹大統領に対する「傲慢」「コミュニケーション不全」との評価もある程度改善されるかもしれない。