2022年にバイデン米大統領が半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)のアリゾナ工場に訪問した際、それを同社の「台湾脱出作戦」と形容したのも、親中操作勢力の「作品」だった。ペロシ元下院議長(民主党)、マッカーシー元下院議長(共和党)の台湾訪問に対しては「米国が台湾のウクライナ化を試みている」というメッセージが似たような過程で広がった。「米国産豚肉は安全ではなく、米政府がそれを台湾にこっそりと持ち出している」という「フェイクニュース」もある香港の新聞社による報道を発端に拡散した。IORGは「タリバンによるアフガニスタン占領など米国にとって良くないニュースや両岸(中国と台湾)の緊張を高める事件が起きた際には、反米的なストーリーへの言及が大幅増えた」と明らかにした。
中国メディアは「拡声器」の役割を果たした。2022年9月、台湾の「風伝媒」というメディアが明確な出所を示さずに「蔡英文が有事の際、側近だけが台湾を脱出できるようにする『VIPパス』を発給した」と報じた。台湾政府はそれを公式に否定したが、1週間後に中国メディア20社余りが追随して報じ、台湾のソーシャルメディアで論議を呼んだ。
IORGは世界的な動画プラットフォームである「ティックトック(TikTok)」の役割にも注目した。フォロワーが約2万人いるティックトックのアカウントは、中国メディア5社がティックトックの中国版である「抖音(ドウイン)」のアカウントで投稿された映像106件を加工せずにそのまま使用していたことが分かった。ティックトックでは中国メディアの報道かどうかを検証できず、通常のコンテンツと同様にシェアされた。IORGは「同じ内容でもティックトックでは再生回数が最大50倍に達することが分かった」とし、「中国はティックトックで『代弁者』のアカウントを量産し、自国に有利なコンテンツを流布することが効果的な戦略だと考えるだろう」と指摘した。米議会ではティックトックの親会社が中国企業の字節跳動(バイトダンス)である点を問題視し、バイトダンスにティックトック株の売却を求める「ティックトック禁止法」の制定を目指している。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員