韓国のスポーツ界では先月、二つの謝罪があった。一つめは東京五輪で3冠に輝いたアーチェリー女子・安山(アン・サン)選手の謝罪だ。安山選手は先月16日、交流サイト(SNS)の自身のアカウントに、光州広域市内にある日本風居酒屋の電光掲示板の写真を載せ、「なぜ韓国に売国奴がこんなに多いのか」と投稿した。韓国で日本料理の店をやっているのは売国奴だと批判したのだ。この投稿がインターネット上で広がるや、店の経営者は「親日派の子孫」などのメッセージを受け取ったという。この店の不買運動をしようという動きも起こったそうだ。
安山選手も批判を免れなかった。安山選手が以前、日本料理の店で食事をしていた写真が出てきたため、「ネロナムブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫=身内に甘く、身内以外に厳しいこと)」とも言われた。結局、安山選手は三日後に「店に直接伺って経営者の方に謝罪しようとしたが、日程上、難しかった。国民の皆様に心よりおわび申し上げます」という文章を投稿した。しかし、経営者は「アンチコメントは次々と生まれている」として、謝罪を事実上受け入れていない。
もう一つの謝罪は、サッカー男子韓国代表チームのイ・ガンイン選手がしたものだ。イ・ガンイン選手は今年2月のアジアカップで、キャプテンのソン・フンミン選手を無視して卓球をしようとして、もみ合いになった。世論ではイ・ガンイン選手への批判が多かった。韓国代表チームのキャプテンに対して盾突いた「下克上」に近かったからだ。イ・ガンイン選手も当初、SNSに短い謝罪文を載せ、さらに大きな批判を浴びた。
一向に批判が収まる気配がないため、イ・ガンイン選手は行動に出た。仏パリから英ロンドンへ飛び、ソン・フンミン選手に直接会って、長い時間語り合ったという。ソン・フンミン選手は「キャプテンとして(イ)ガンインがより良い人、良い選手に成長できるようにする」と言って、謝罪を受け入れた。それから約1カ月後、イ・ガンイン選手は報道陣の前であらためて「国民に対する謝罪」をした。そのおかげで世論の批判のかなり多くが水に流れた。
SNSは感情の消耗が少ない。緩いつながりの中で自由にコミュニケーションできるからだ。SNSを通じた謝罪もそうだ。国民向けの記者会見のように自らの姿を見せなければならない謝罪よりは心の傷がはるかに小さい。そのため、最近の有名人たちは謝罪しなければならない時、心の負担が少ないSNSを選ぶ。
しかし、SNSではきちんと伝わらないものがある。相手に届けなければならない真心だ。イ・ガンイン選手はプライドを引っ込めてソン・フンミン選手の所へ自ら飛んでいき、直接謝罪した。そして、ソン・フンミン選手と先月26日のタイ戦で協力してゴールを生み出し、一緒に抱き合いながら溝を埋めた。それとは対照的に、安山選手は長い時間をかけて練り上げたようなきちんとした文章だったのにもかかわらず、店の経営者は受け入れなかった。同じ謝罪だったが、結果にはこのような差が出た。
ある報告書によると、韓国のSNS利用率は世界2位(89%)だそうだ。これは世界平均(53.6%)の1.7倍近い。SNSではよく見えない真心が多いだろうし、1.7倍ほどではないだろうが、そうして隠れてしまっている真心も多いのではないだろうか。どうしても届けなければならない気持ちなら、直接会って伝えることをお勧めしたい。
イ・ヨンビン記者