3月30日、忠清北道報恩郡の池でおぼれて心停止状態で救助された2歳9カ月の女児が、およそ3時間後に死亡した。報恩郡内の病院から忠清・京畿地域の大学病院11カ所に移送しようと試みたが、「人員・病床が足りない」「移送可能な患者の状態ではないように思う」などの理由で拒否されていた。
【図】2歳女児の死亡までの経緯と受け入れを拒否した大学病院11カ所
31日に消防当局などが明らかにしたところによると、前日午後4時30分ごろ、忠清北道報恩郡報恩邑で「2歳の女児Aちゃんがビニールハウスの隣にある深さ1メートルの池でおぼれた」という通報が119状況室に入った。父親に救助されたAちゃんは、呼吸と脈拍がない状態で119救急隊の心肺蘇生術(CPR)を受けつつ、19分後に報恩郡内の病院へ搬送された。その後、CPRの過程で一時脈拍が検知され、忠清・京畿地域の大学病院11カ所に連絡して転院を試みたが、人員・病床不足等を理由に最後まで拒否された。Aちゃんは、最初に発見されてからおよそ3時間後の午後7時40分ごろ死亡した。
医療界では、Aちゃんを他の大きな病院に移送しても命を救うのは難しかっただろうとしている。イ・ホンミン大韓応急医学医師会長は「Aちゃんは心停止状態で病院に来た『病院外心停止』患者で、こういう場合、再びよみがえる可能性は平均的には5%未満」と語った。
だが今回の事件で、劣悪な地域医療、小児救急医療システムの素顔があらわになった、という指摘もある。実際、Aちゃんが最初に搬送された報恩B病院には救急医療の専門医がいなかった。忠清地域全体で見ても、小児専門の救急医療センターの数は「ゼロ」だ。小児外科の専門医も、忠清地域の大学病院には皆無。韓国政府の関係者は「現在調査中だが、転院を拒否した各病院には小児診療の医師や小児ICU(集中治療室)の余力がなかったものとみられる」と述べた。
一方、1日から韓国各地の大学医学部の教授らは外来診療を取り消し、開業医らも「週40時間」診療を行うと表明し、韓国の医療空白はますます拡大するものとみられる。
安俊勇(アン・ジュンヨン)記者、オ・ユジン記者、キム・ソクモ記者