中国は数千年間、外国から貢ぎ物を受け取り、下賜品を与える朝貢貿易を行った。朝貢体制を維持した力の一つは中国製品のハイエンド(最高品質)だった。周辺国は朝貢を通じてのみ、陶磁器、紙、絹、医薬品、科学器材など当代最高の品物に接することができた。朝鮮王朝が朝貢は3年に1回だけにせよという明の要求を無視して、朝貢使臣団を毎年数回送ったのも、高品質の品物に対する渇望があったからだ。
17世紀の欧州では王室、貴族の邸宅に「チャイナルーム」という別室があった。中国の陶磁器、漆器、絹などの中国産工芸品を集めた場所だった。チャイナルームの規模が富の尺度と見なされるほどだった。印刷術、火薬、羅針盤を発明した技術先進国の中国だが、18世紀の産業革命以降、欧州に遅れ始めた。中国の陶磁器は英国のボーンチャイナに、絹はインドの綿花に取って代わられた。
共産革命以降、改革開放を標榜し、中国も産業化に乗り出したが、中国の工業製品は数十年間、安物、偽物の地位を脱することができなかった。そうこうしていると、2010年以降、MP3プレーヤー、イヤホン、携帯電話バッテリーなど小型家電を中心にコストパフォーマンスが良い高性能の製品が登場し、「大陸の失敗」という新語が登場した。中国の技術力ではそんな製品を作れるはずがないのに、「何かの間違いで」良い製品ができたという意味だ。その後、人工知能(AI)、航空宇宙、量子コンピューターなど最先端分野の技術が向上し、「大陸の失敗」はその領域を広げている。
最近ソウル江南地区の主婦の間では、中国製ハイテクロボット掃除機が必須アイテムとして定着した。ほこりの吸入だけでなく、水拭き掃除まで行い、掃除が終われば、雑巾の洗浄、乾燥まで全て自分でやってくれる。価格が150万ウォン(約16万8000円)以上するにもかかわらず、市場シェアは80%に達する。安物家電の代名詞だった中国メーカー、海爾(ハイアール)は2016年、ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業を買収後、ブランド企業に変身した。ハイアールのワイン冷蔵庫は高品質、最高のコストパフォーマンスで米国市場の60%を掌握した。最近中国の携帯電話メーカーはドイツのライカカメラとAI機能を搭載した先端製品でアップルに攻勢をかけている。
「大陸の失敗」の元祖、小米(シャオミ)が電気自動車(EV)への進出を宣言してから3年で驚くべきスペックのEVを発売した。ポルシェタイカンに似たシャオミSU7は664馬力のパワーを持ち、2.78秒で時速100キロに到達する。最高速度265キロを誇り、1回の充電で800キロを走る。10年前「中国のEVは不良製品だ」と笑ったイーロン・マスクが最近は「中国のEVが輸入されれば、米国の自動車メーカーはほとんど倒産するだろう」と警告している。眠りから覚めた「ハイエンド中国」の勢いは恐ろしいほどだ。
金洪秀(キム・ホンス)論説委員