北朝鮮の国営放送で放映された海外の番組で出演者の衣装が検閲の対象になっていた。着用していたデニムパンツにぼかしが入っていたのだ。
朝鮮中央テレビは25日、英BBC放送で2010年に放映された教養番組「ガーデン・シークレット」を放映した。園芸家が庭を手入れする方法を伝えるもので、番組にはアラン・ティッチマーシュ氏が出演していたが、ティッチマーシュ氏が土に膝を立てて座り植物を手入れする場面で、画面の一部にぼかしが入った。ティッチマーシュ氏の腰から下のデニムパンツを見えないようにしたのだ。
BBCや英紙ガーディアンなど外信は北朝鮮のテレビ番組でティッチマーシュ氏のデニムパンツにぼかしが入った理由について「故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代から始まった『悪性欧米文化退治キャンペーン』の影響」「このキャンペーンは最近再び強化されている」と伝えた。北朝鮮は1990年代からデニムパンツを「欧米帝国主義のシンボル」として禁じているが、これは北朝鮮の若者が欧米の物資を通じて「資本主義への関心や憧憬(しょうけい)」を持たないよう、事前に遮断するためだ。
自分の衣装が検閲の対象になったと聞いたティッチマーシュ氏はBBCの取材に「私は自分のことを危険で全面的な帝国主義者と考えたことはない。平凡であまりに無害な人間だ」「私のデニムパンツはそれほど体にピッタリではなかったが、北朝鮮では明らかに許されない服装だったようだ」などとコメントした。
ロシア人の北朝鮮観光が先日から再開されたが、ツアー会社が公開した注意事項にもデニムパンツに関する記載がある。金日成(キム・イルソン)・金正日父子の遺体が安置されている錦寿山太陽宮殿に行く時の服装のルールとして「露出の多いブラウスやミニスカート、半袖Tシャツ、デニムパンツ、サンダルなどを着用してはならない」とある。
米国のラジオ放送「自由アジア放送(RFA)」も2022年に「北朝鮮政権は資本主義ファッションやヘアスタイルを取り締まり中」と報じ「外国語が書かれたスキニーパンツ、Tシャツ、髪染め、長髪などが取り締まり対象」と伝えた。また韓国統一部(省に相当)が先月公表した「北朝鮮の経済・社会の実態報告書」にも脱北民の証言として「スキニーパンツなどを着ているとパンツが破られたり切られたりして罰金を支払わねばならない」と記載されている。
BBCによると、ガーデン・シークレットは2022年以降、北朝鮮でも何度か放映されたという。ただし朝鮮中央テレビがこの番組をどのようなルートで入手したかは明らかではない。BBCによると、海外の放送コンテンツはメモリーカードに記録され中国国境を通じて極秘に北朝鮮に渡っているという。BBCは「北朝鮮では外国コンテンツの所有や取引は違法だが、北朝鮮の放送局はたまにコンテンツを極秘で確保し、ロゴにぼかしを入れた上で放映している」と伝えた。
ムン・ジヨン記者