■2002年、夢は実現した
豊かさと自由の時代にも残存した権威主義文化と理念の陰はX世代を強く抑圧した。49歳の研究員Pさんは「高校生の時、『君の欲望に忠実であれ』という内容のソ・テジと015Bの歌を聴く一方で、教練服を着て軍事訓練を受けたことがあった」と振り返った。校内体罰がはびこった半面、全国教職員労働組合(全教組)所属の教師たちは教科書を覆し、左派の歴史を教え、学生たちの血を沸き立たせた。
パクさんは「1994年に大学に入学すると、『86世代』(1980年代に大学に通った1960年代の人)の学生運動家の先輩が武勇談を語り、在韓米軍の撤収歌を聞かせてくれた。TOEFLの勉強をすると『意識がないヤツ』と思われた」と話した。へそ出しTシャツにピアスホールを開け、ポケットベルから携帯電話に乗り換えたX世代には、無意識になぜだか分からないまま、市民運動勢力に対する負い目が芽生えた。
50代の中堅企業役員Sさんは「大学卒業直前に起きた1997年のアジア通貨危機は『保守の大統領(金泳三=キム・ヨンサム)は無能だ』『既存の秩序は間違っている』という印象を深く残した」と話した。X世代は通貨危機による影響をまともに受けたわけではなかった。彼らは高卒であれ大卒であれ、就職がうまくいき、マイホームの購入も容易だった最後の世代だ。そして今でも資産蓄積速度が一番速い世代として挙げられる。
X世代がちょうど大学に通っているか社会に出た2002年は、記念すべき年だった。6月にサッカー韓国代表が「赤い悪魔」と呼ばれたサポーターの応援に支えられ、W杯ベスト4入りという快挙を成し遂げた。「私たちが広場に集まれば不可能なことはない」という集団達成感を抱かせる強烈な記憶となった。9月には女子中学生のヒョスン、ミソンさんが在韓米軍の装甲車の下敷きになって死亡した事故を受けた反米デモが起きた。
そして、盧武鉉(ノ・ムヒョン)がやってきた。ダークホースの盧武鉉氏はインターネット上のファンクラブである「盧武鉉を愛する人々の会(ノサモ)」と民主党の予備選で旋風を巻き起こし、12月に大統領に当選した。オーマイニュースやタンジ日報など新興インターネットメディアが20代に反響を呼んだ。46歳の大企業部長Kさん(女性)は、「当時友人で盧武鉉を応援しない人はおかしく見えた。自分手で初めて選んだ大統領は盧武鉉であり、『革新は正義でクリーンだ』という偏見がしばらく刻まれた」と話した。