韓国政府は21日「医師による製薬会社へのパワハラを通報すれば、最大で30億ウォン(約3億4000万円)の補償金を支払う」と発表した。医師が製薬会社から違法なリベートを受け取り、また製薬会社の社員に私的な雑用を強要した場合、これを通報すれば巨額を支払うという意味だ。韓国保健福祉部(省に相当)の朴敏守(パク・ミンス)第2次官は「製薬会社からのリベートなど違法行為がはびこっているとの情報提供があった。政府は責任を持ってこれを根絶する」との考えを示した上で、5月20日までを「集中通報期間」に設定した。製薬会社の違法リベートや医師のパワハラ問題は以前から問題視されてきた。今回政府が突然「30億ウォン」を懸賞金のごとく提示した背景には、大学医学部定員増に反対する医師らをけん制する狙いがある。これでは慎重かつ合理的な政策というよりも、低レベルのただのけんかだ。当然逆効果となる可能性も高い。
病院を離れた研修医らに対して韓国政府は「来週から免許停止などの行政処分を開始する」とあらためて強調した。現在研修医の90%以上にあたる1万人以上が免許停止の対象だという。これに対して一部医師らが海外での就職をちらつかせると「行政処分を受けた医師は不可能」とくぎを刺した。兵役を終えていない研修医は兵務庁の許可がなければ海外出張もできない。警察も大韓医師協会非常対策委員会の幹部らを相次いで呼び事情を聴いている。医療関係者らに対して「あらゆる問題で対話はオープン」としながらも、実際は強硬一辺倒だ。
大学医学部定員増については圧倒的多数の国民が賛成しているが、この問題はさまざまな集団の利害関係が複雑に絡みあっている。政府と医療関係者、医療関係者と患者、医療関係者の間でも医師・看護師・韓方医師らの考えも大きく食い違っている。この状況で一つの集団を完全に屈服させようとすれば、当然大きな抵抗に直面するだろう。大韓医師協会非常対策委員会は22日の声明で「現政権を正常な大韓民国政府として認めない」との考えを示した。これも理性を失った行動と言わざるを得ない。
韓国政府と医療関係者双方の主張はすでに十分明らかになった。次は対話だ。医療関係者の間では「2000人増員からスタートし、その上であらためて対話を」との声も聞かれる。政府は完全な勝利を望んでいるだろうが、それでは禍根を残すだろう。多少不十分でも対話と妥協に応じれば、政府と医療関係者、国民の健康全てにとってより良い結果がもたらされるはずだ。