【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の宣伝を信じて帰還事業で北朝鮮に渡った後、脱北した在日コリアン出身の5人が、韓国で北朝鮮を提訴した。北朝鮮の人権実態を調査する韓国民間団体の北韓人権情報センターは13日、5人の代理として、精神的被害に対する慰謝料1人当たり1億ウォン(約1120万円)を請求する訴訟をソウル中央地裁に起こしたと明らかにした。
原告の一人で、北送在日僑胞協会の李泰炅(イ・テギョン)代表は「到着したとたん、『楽園』とはかけ離れた様子に仰天した」と語った。当時8歳ながら、間違った所に来てしまったことを直感したとし、北朝鮮にだまされたと強調した。
北韓人権情報センターは「在日僑胞北送事業の責任の主体は北で、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)と日本政府も責任から逃れることができない。在日僑胞保護の義務を尽くさなかった韓国政府にも責任の一端がないとはいえない」と指摘した。原告らが北朝鮮帰還当時に韓国国籍で、北朝鮮が韓国の憲法上、韓国領土であることなどを踏まえて韓国の裁判所に提訴したと説明した。
北朝鮮は1959~84年、朝鮮総連を通じ「地上の楽園」をうたい在日コリアンら約9万3000人を北朝鮮に渡航させた後、強制的に居住地や職業を割り当てた。その多くが労働を強いられて苦しみ、「敵対階層」に分類されたことで人権侵害も受けた。
日本でも同様の訴えがあり、東京高裁は昨年10月、訴えを退けた一審判決を取り消して審理を東京地裁に差し戻した。北朝鮮側は一、二審とも出廷せず、答弁書なども提出しなかった。