ロシアの情報機関である連邦保安庁(FSB)により1月にスパイ容疑で逮捕された韓国人は現地で宣教活動を行っていた「ペク」姓の牧師だったことが本紙の取材で12日までに分かった。ペク牧師はウラジオストクで北朝鮮の伐木作業者や脱北民などを支援していたという。中国は昨年7月からスパイ容疑に対して無期懲役あるいは死刑まで宣告できる反スパイ法を施行しているが、ロシアも同じ方法で外国人への圧力を強めているとして懸念が高まっている。昨年9月に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記とロシアのプーチン大統領が首脳会談を行ったが、その直前にロシアは北朝鮮労働者を北朝鮮に送り返す航空機を使って数十人の脱北民を強制送還していたことも分かった。
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今回本紙の取材に応じたウラジオストクの現地筋は「ペク牧師はロシアで働く北朝鮮労働者への支援を続け、脱北を希望する労働者がいた場合はこれを後押しする宣教チームと共に活動を行っていた」「韓国で生活していた妻と共に1月にウラジオストクから入国した直後、逮捕状を持つFSB担当者に身柄を拘束された」と伝えた。この現地筋によると、ペク牧師は中国で宣教活動をしながらロシアにも行き来していたが、中国で反スパイ法が施行され韓国の宣教団体に対する中国政府の圧力が強まったことから、活動の拠点をロシアに移していたという。ペク牧師と共にロシアに入国した妻もFSBに拘束されたが、その後釈放され今は韓国に滞在している。
ロシア国営タス通信は前日「ペク牧師はモスクワのレフォルトボ刑務所に収容された」「レフォルトボの裁判所は彼の拘束期間を6月15日まで延長した」と報じた。この刑務所はスターリン時代に多くの反体制派が収容されたことでも知られる。韓国外交部(省に相当)の任洙奭(イム・スソク)報道官は前日の定例会見で「現地公館は韓国国民逮捕の事実を把握した直後から領事らを通じてさまざまな支援を行っている」「韓国政府は韓国国民が一日も早く家族の元に安全に帰ることを期待しており、そのためロシア側とも必要な連絡を取り合っている」と説明した。
ロシア政府はペク牧師の刑事事件関連の書類を「機密」に指定し、具体的な容疑については韓国政府にも説明していないという。ロシアは昨年3月に米ウォールストリート・ジャーナルのモスクワ特派員をスパイ容疑で逮捕し今も刑務所に収容しており、また昨年6月にもラジオ・フリー・ヨーロッパの編集者を「外国のエージェント(代理人)として登録しなかった」として逮捕・起訴した。ロシアの事情に詳しいある専門家は「外国人を任意に拘束する中国とは違い、これまでロシアは法的な手続きなしには外国人を拘束しないと考えられてきた」「タス通信を通じて事件が公表されたので、今後事件についてより多くの内容が明らかになれば、ロシアにおける政策の変化を正確に読み取ることができるだろう」とコメントした。
金真明(キム・ジンミョン)記者