韓国総選挙まで約1カ月 政権の命運分ける尹大統領の「中間評価」

【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権にとって今後の国政運営を左右する正念場となる総選挙が、尹大統領の就任2周年を1カ月後に控えた4月10日に実施される。今回の総選挙の意味を巡ってはさまざまな意見があるが、5年任期の折り返しを前に行われる選挙だけに「中間評価」という性格を帯びざるを得ない。さらに、今回の総選挙はそれ以上の政治的含意を持つことになるというのが政界全般の認識だ。

 大統領室の高官は8日、聯合ニュースの取材に対し「立場の異なる政党が多数党になり、事あるごとに衝突すれば国政は足を引っ張られるしかない」とし、「与党が勝利すれば今後の国政運営が根本的に変わる可能性がある」と述べた。 

 尹大統領は就任後、野党が過半数の議席を握る「与小野大」の高い壁に阻まれてきた。不利な構図の中で、女性家族部の廃止など大統領選での主要公約すら守れていない状況だ。

 巨大野党はコメの超過生産分の政府買い上げを義務付ける糧穀管理法改正案、看護法改正案、労働組合法改正案のほか、韓国教育放送公社法・放送法・放送文化振興会法の「放送3法」改正案などの可決を主導し、尹大統領を圧迫した。

 さらに、金建希(キム・ゴンヒ)大統領夫人が輸入車ディーラー「ドイツ・モーターズ」の株価操作事件に関与した疑惑を究明するとして特別検察官による捜査を進めるための法制定の採決を強行するなど、尹大統領夫妻を正面から攻撃した。

 これらの法案に対して尹大統領が行使した拒否権の回数は、李承晩(イ・スンマン)初代大統領を除く歴代大統領の中で最多を記録。その間、尹大統領の支持率は横ばいを続けた。

 支持率を上昇させるためには外部環境の改善が必要だが、直ちに好転する兆しは見えない。

 新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)以降、世界的に景気が悪化し、ウクライナ戦争やイスラエルとイスラム組織ハマス間の衝突など大きな悪材料も重なった。

 さらに、北朝鮮もミサイルの発射実験や軍事偵察衛星の開発など挑発の度合いを高め、現政権を苦しめた。

 国政運営の両軸である多数党のバックアップも、国民からの支持も得られなかった尹大統領にとっては、文字通り「弱り目にたたり目」となった2年間だった。

 与党はこのような二重苦を打開するため、総選挙に総力戦で挑む構えだ。

 総選挙で勝利すれば、これまで遅々として進まなかった尹政権の国政課題である医療・教育・労働・年金の「4大改革案」を軌道に乗せることができる。

 尹大統領は今月5日、今年の業務報告を兼ねて開催した国民との討論会で、企業が労働者に支給する出産支援金を全額非課税とするための所得税法改正や各種開発事業の推進を約束したが、このような国民生活・経済回復策にも弾みがつくとみられる。

 一方、総選挙で敗北して巨大野党との対立を続けることになれば、これまで進展のなかった国政課題は有言不実行に終わる公算が大きい。  

 そうなれば任期後半に入る現政権の国政掌握力はさらに落ちざるを得ず、早期にレームダック(死に体)に陥る恐れもある。

 ここで手本になるのは、任期中盤に総選挙が行われた文在寅(ムン・ジェイン)・朴槿恵(パク・クネ)両政権だ。

 文政権は就任から約3年後の2020年4月に実施された総選挙で、当時の与党「共に民主党」と比例向け系列政党で定数300のうち合計180議席を確保する大勝を収め、安定した任期後半を送った。

 文大統領退任直前の22年5月には、検察の捜査権を大幅に縮小する法案を公布して任期を終えることができた。

 一方、朴政権は発足から3年後の16年の総選挙で与党「国民の力」の前身・セヌリ党が第1党から転落し、党の内紛が激化。翌年の朴氏の弾劾にまでつながった。導火線となったのは朴氏の長年の知人、崔順実(チェ・スンシル)氏の国政介入事件だったが、少数与党の構図の中でセヌリ党のガードが崩れたことが決定打となった。

 したがって、今回の総選挙でも与野党に分かれて陣営が結集したこれまでの大統領選の構図が再現される可能性が高いとみられる。

 明知大の申律(シン・ユル)教授(政治学)は「与小野大になれば、(現在の)第21代国会よりさらに劣悪な環境になるだろう」と述べ、政治評論家のパク・サンビョン氏は「少数与党になればレームダック化するだろう」との見通しを示した。

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