大阪の心斎橋に最近オープンしたユニクロの店舗が話題だ。店内のPOPやフラッグを全て関西弁にしている。「ありがとうございます」を「おおきに」と記すなど、他の地域では使わない方言だ。地元の人でなければ理解し難い言葉だが、この店は外国人や日本人観光客でごった返している。ここを訪れた人々は「日本じゃなくて大阪に来た、という印象がある」と語る。
【グラフ】「嫌なら来るな」 日本、外国人客から国際観光旅客税を徴収へ
隣の京都では、コーヒーフランチャイズ「スターバックス」の看板の配色が全てモノクロだ。他の国や都市では、スターバックスの看板は緑をベースにしてギリシャ神話に登場する「セイレーン」を描くのを通常とする。これは、京都特有の木造建築物がつくり出すひっそりした雰囲気や自然の景観を損なわないように、地域当局が規制をかけた結果だ。ハンバーガーフランチャイズ「マクドナルド」も例外ではない。マクドナルドを象徴する赤地に黄色の「M」字ロゴは影も形もなく、看板が赤褐色であったり、さらには黒地にM字ロゴを描いているだけのケースもある。コンビニのローソンなど、日本企業にも同じ規制が適用される。
日本では昨年、コロナ終息後に外国人観光客が急激に集まったことで「オーバーツーリズム」(観光公害)問題が急浮上した。街は観光客の路上喫煙やポイ捨てで汚くなった。このままいくと当該地域から内国人観光客の足が遠のいて「外国人専用都市」に転落してしまい、ひいては観光都市としての魅力も色あせる危険性が高い。これに危機感を抱いた各都市が「地域の特色死守」のための自救策を編み出している。
韓国の状況はどうだろうか。「国内最高の観光地」だった済州島は昨年、コロナ終息にもかかわらず、観光客数はむしろ前年より4%減った。国内観光客は8%も落ちたという。韓国国内の物価上昇と円安で日本旅行が流行したせいもあるだろうが、多くの人は、済州島旅行を避ける理由に「ぼったくり」など内部的な要因を挙げている。ソウルの広蔵市場は最近、外国人観光客で混み合っており、コロナで失った活気を取り戻したが、外国人でいっぱいの風景や価格を水増しする「小ざかしい商売」を不愉快に思う内国人の相当数が訪問をためらっているのも事実だ。釜山・統営・麗水など、どこへ行こうと存在している「壁画村(家の壁面や地面に絵を描いてある)」は、外国人にとっては目新しいかもしれないが、韓国人の立場からするとちょっと地域の特色を感じ難い。
旅行業界からは「外国人の立場で韓国と日本、中国を見て回ったとき、韓国を選ぶ理由はKポップやKフードくらいで、他にはあまりない」という声まで出ている。誇張された面はあるが、観光地として見た今の韓国の在り方について、正鵠(せいこく)を射た言葉だと思う。地域の特色を守ろうと自救策を整備する日本の地方都市のように、韓国も観光大国へと跳躍するためには「わが街だけの楽しみどころ」を講究しなければならない。外国人を呼び込むどころか内国人観光客まで周辺国に奪われている状況を、ただ見ているだけではいられないだろう。
金東炫(キム・ドンヒョン)記者