韓国医療現場「崩壊」の恐れも 政府の強硬姿勢に引かぬ医師=医学部定員増

【ソウル聯合ニュース】韓国で医師不足などの対策として政府が大学医学部の入学定員増加を発表したことに医師らが強く反発し、お互いに強硬姿勢を崩さない「強対強」の対立が続いている。全国で専攻医(研修医)が19日に一斉に辞表を提出して職場を離脱して以降、医療現場で大きな混乱が生じている。

 政府は23日、保健医療災難(災害)危機警報を「深刻」に引き上げた。4段階の警戒レベルのうち最も高い「深刻」が保健医療で発令されるのは初めて。

 このままでは、医療現場の「崩壊」も懸念されるため政府と医療界が歩み寄るよう求める声が高まっている。

◇職場離脱した研修医 政府の業務復帰命令を「無視」

 政府によると、22日までに主要94病院で専攻医全体の78.5%に当たる8897人が退職届を提出した。退職届は受理されていないが、7863人が職場を離脱している。

 保健福祉部は7038人に業務復帰命令を出した。このうち、5976人は所属病院から「業務復帰不履行確認書」を受けている。約6000人が政府の命令に従っていないことになる。

 多くの専攻医が職場を離れたことで患者の被害も増えている。ソウル市内の大型病院ではフェローなどと呼ばれる専任医や教授が入院患者の管理や救急患者への対応に当たっている。

 ソウル大学病院などは手術数を約30~40%、セブランス病院は約50%減らした。サムスンソウル病院は手術の約45~50%を延期している。

 診療に支障が出ていることを受け、患者は公共病院や中規模病院に殺到。長時間「たらい回し」にされた末に他地域の病院で受診するケースも出ている。

 政府はこのような状況を重大な危機とみて、あらゆる手段を動員して対応している。23日には保健医療災難危機警報を最も高い「深刻」に引き上げ、中央災難安全対策本部を設置した。本部長を首相が、第1次長を保健福祉部長官が、第2次長を行政安全部長官が務める。保健福祉部の朴敏守(パク・ミンス)第2次官は記者会見で、「重症・救急診療の要である上級病院で専攻医が占める割合は30~40%水準だが、現場を離脱した専攻医が全体の70%を超えたため、相当な危機だと判断した」と述べた。

 今後は政府挙げての対応体制の強化とともに、医師免許停止や主導者の身柄拘束など政府が打ち出した措置がさらに具体化するとみられる。

◇今後1週間から10日がヤマ場

 医療界では「これから1週間から10日がヤマ場」との観測が出ている。「専攻医3人の仕事をこなしている」などと訴えている専任医らも病院を離れ、混乱がさらに深刻化する恐れがある。専任委は専攻医課程を終えた後、専門医資格を取得して専攻分野を学ぶ医師で、通常は2月末に1年単位で契約する。この専任医が政府の政策への反発や業務負担の増加により再契約をしないなどの方法で一斉に医療現場を離脱する恐れがある。

 専任医は専攻医と異なり専門医の資格を持って幅広い分野で診療を行う。現在、勤務時間を増やすなどして専攻医の離脱による「空白」を埋めているが、専任医まで病院を離れると医療現場は崩壊寸前の状態になるとの見方もある。

 政府は医療混乱の責任は現場を離脱した医師らにあるとしているが、状況がさらに悪化する場合は政府の対応への批判とともに、大学医学部の入学定員増加方針を懐疑的に見る声が出る可能性がある。

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