医療混乱 政府が最も高い警戒レベル「深刻」発令=韓国

【ソウル聯合ニュース】韓国で医療現場の混乱が広がっていることを受け、政府は23日午前8時をもって保健医療災難(災害)危機警報を「深刻」に引き上げた。4段階の警戒レベルのうち最も高い「深刻」が保健医療で発令されるのは初めて。政府が医師不足などの対策として発表した大学医学部の入学定員増の方針に反発し、専攻医(研修医)が職場を離脱し続けているため。医療を受けられない患者が多数発生し、現場に残っている医療従事者の負担も増している。

 災難および安全管理基本法は、自然災害の他に、新型コロナウイルスなどの感染症や「保健医療など国家核心基盤のまひ」なども災害と位置付けている。

 専攻医の現場離脱に続き、医師団体の大韓医師協会(医協)も来月3日に全国規模の集会を開くと予告している。国民の健康と生命への被害が拡大しているとして、保健福祉部はこの日、警戒レベルを引き上げた。新型コロナウイルスが猛威を振るっていた時期でも「深刻」は発令されていなかった。

 専攻医の数は全国で約1万3000人。そのほとんどが勤務する全国100の主要な病院では21日までに計9275人の専攻医が退職届を提出した。専攻医全体の7割に当たる。実際に病院に出勤していない専攻医は8024人と、前日から211人増えた。

 保健福祉部は業務開始命令が出されても職場に復帰しない専攻医の医師免許を停止する方針を示し、法務部は団体行動の主導者について身柄を拘束して捜査するとの原則を掲げた。こうした政府の圧力にもかかわらず、患者のもとを去る専攻医の数は増え続けている。

 医協は専攻医の一斉辞表提出を「集団行動ではない。後輩たちの自由な決定」として支持を表明した。

 政府と医師側の対立が深まる中で巻き添えになっているのが患者たちだ。ソウル市内の大型病院では手術件数が3~5割減った。各病院は当直も含めて専攻医が抜けた穴を専門医や教授で埋めているが、専攻医の不在が長引けば持ちこたえるのは難しいとみられる。

 ソウルの主要5病院の関係者は「この先1週間から10日がヤマになるかもしれない」とし、その後の状況悪化には歯止めがかからないだろうと懸念した。 

 ある患者はがんの転移が見つかり、20日に入院、21日に手術予定だったが取り消しとなったとして、最悪の事態への恐怖を語った。地方では、受け入れる救急室が見つからず、救急治療を受けるまで何時間もかかるケースが発生している。

 現場に残る医療従事者には負担がのしかかる。残業はもちろんのこと、食事の時間さえまともに取れないという。医療従事者の一人は「一番良い方法は、政策を巡る政府とのあつれきを減らすこと」と話し、専攻医の一日も早い業務復帰を願った。

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