尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の音声、写真、動画などを捏造して制作した偽動画に対して警察が22日に捜査に乗り出した。4月の総選挙への影響を狙って尹大統領の動画を捏造した偽動画が広がるのは今回がはじめてだという。
【写真】自分の写真1枚で…本紙男性記者によるディープフェイク実験
ソウル警察庁サイバー捜査隊は同日、TikTokなどSNS(交流サイト)を通じて広がる尹大統領の偽動画制作者とこれを広めた者に対する告発状を今月6日に受理し、容疑者を追跡していることを明らかにした。警察によると、この動画はTikTokやMeta(旧フェースブック)、インスタグラムなど複数のSNSに掲載されているという。警察は「問題の動画は1人の人物が主に掲載した」と推測している。警察は放送通信審議委員会に文書を通じて動画の遮断と削除を要請した。
問題の動画は昨年12月からSNSを通じて広がった。長さは46秒で題目は「尹錫悦大統領の良心宣言動画」だ。動画に登場する偽の尹大統領は「無能で腐敗した尹錫悦政権は特権や反則、不正や腐敗を日常化している」「私尹錫悦は常識外れのイデオロギーにとらわれて大韓民国を崩壊させ、国民を苦痛に追い込んだ」と述べた。動画には尹大統領の姿や声が登場するが、実際は以前からある写真や動画、音声などから人工知能(AI)を使って本物のように作り上げたディープフェイク動画と専門家はみている。
放送通信審議委員会はこの動画について「選挙をにらんだ最初の尹大統領ディープフェイク」との判断から、23日に緊急の通信審議小委員会を招集してこの問題を審議し、即時削除と遮断を行う方針だ。委員会は「大統領の姿を悪用した偽動画は社会に混乱をもたらしかねない」として警戒を強めている。
与野党は昨年12月にディープフェイクを悪用した選挙運動を投票日の90日前から全面禁止とする公職選挙法改正案を可決・成立させた。AIを使ったディープフェイク動画は韓国国内はもちろん海外でも問題となっている。今年大統領選挙が行われる米国では先月23日にニューハンプシャー州での予備選挙を前にバイデン大統領のディープフェイク音声が広がり、また昨年はトランプ前大統領が手錠をかけられ警察に連行される偽の写真が広がった。
キム・スギョン記者