日本の大手100円ショップ、ダイソーを創業した矢野博丈前会長(80)が死去した。ダイソーという社名は漢字「大創」の日本式発音で「大きく繁盛する」という意味だ。このブランド名は日本からやって来たが、韓国のダイソーはさらに進化し今や「ダイソー族」「ダイソーファンダム」「ダイソーVIP」など数々の流行語と共に韓国に独自の消費文化をもたらすようになった。
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若い世代の間でダイソーは「蕩尽(とうじん)ジェムの聖地」「狂乱物価の中で気軽にぜいたくできる店」とも呼ばれている。「蕩尽ジェム」とは「金を思う存分使う楽しさを味わう人」を意味する流行語だ。デパートのVIPになるには1年に数千万ウォン(数百万円)を使わねばならないが、「ダイソーVIP」「ダイソー・マンスール」たちは「10万ウォン(約1万1000円)突破しました」「私は15万ウォン(約1万7000円)も使ったことがあります」などのコメントと共に数十種類の買い物をした時の領収書をSNS(交流サイト)などにアップする。3万種類以上ある商品のうち80%が1000ウォン(約110円)か2000ウォン(約220円)で、最も高いものでも5000ウォン(約560円)だ。値札を見ずにあれこれ買っても2万-3万ウォン(約2200-3400円)程度にしかならない。
米国の1ドル(約150円)ショップや日本の100均など均一価格の小売店は不況に強い産業と言われる。1879年にフランク・ウールワースがニューヨークで5セント(現在のレートで約7.5円)均一価格の店をオープンしたのが最初だ。韓国の1000ウォンショップは韓国ダイソーの朴正夫(パク・チョンブ)会長が1997年に1号店をオープンした。45歳と決して若くない年齢での創業で、元は日本のダイソーに納品する貿易会社だった。最初は「アスコ」という1000ウォンショップだったが、2001年に日本のダイソーから4億円(株式の34%)の投資を受け名称を変更した。この名称は「タ・イッソ(全てある)」を連想する言葉として受けいられている。今もよく日本企業と誤解されるが、日本のダイソーが所有していた株を昨年全て買い取り今は100%韓国企業だ。
モデルのハン・ソヒが誕生日パーティーで着用した派手なドレスと宝石ネックレスやイヤリング姿の写真をSNSに掲載したが、これらは高級品ではなく全てダイソーで買った1000ウォンのおもちゃだった。「お人形遊び」に使う子供用の商品だが、若者たちの間では誕生日パーティーやクリスマスパーティー用に飛ぶように売れている。低価格の生活用品売場には節約志向の40-50代主婦が多いと思われがちだが、意外にも一番多いのは20代(30%)だ。50代以上はわずか5%で、10-30代が全体の75%を占めるという。ありとあらゆる生活用品はもちろん、ペット用品やガーデニング用品に加え、中にはワイン用品もあり、気軽に買える価格でちょっとした日常の楽しみを味わいたい若い消費者を魅了している。
「ダイソー族」のおかげで1000ウォンの商品を売るこの企業が3兆ウォン(約3300億円)以上の売り上げを記録する「流通業界の恐竜」として大成功を収めた。その一方で小学生までがあれこれ買い求め、商品を箱から取り出す時の写真や動画をアップする「ダイソーカン(箱から取り出すこと)」が一種の遊びのように流行している。これでは節約ではなく1000ウォン、2000ウォンの「細かい浪費」だが、これが習慣化すると小雨で服が少しずつ濡れるように徐々にお金が出ていき、家には不要品ばかりが積み上がってしまうだろう。
姜京希(カン・ギョンヒ)記者