だが、当の住民らは冷笑的だ。「平壌ニュータウン」は、見た目だけは超高層、超現代的だ。ところが、制限送電でエレベーターは飾り物と化して70-80階を歩いて行き来し、暖房・温水の供給もめちゃくちゃなので服を何枚も重ね着する。住居環境がましな「ロイヤル棟」「ロイヤル階」は政権の実力者らに裏金を渡した人々が占めている。「除隊軍人、科学者、教授などに優先配分する」という原則はとうに崩れた。「誰にどれだけ握らせるかによって和盛地区の入舎証(居住許可証)が出る」という必勝公式が出回っている。党序列トップ10前後の軍需・経済担当政治局委員2-3人が最も確実だという。李善権(リ・ソングォン)、玄松月(ヒョン・ソンウォル)も手腕が良い方に属する。住民らは「ああして裏金を受け取っても平然としているのを見ると、いかにも実力者」とひそひそうわさをしている。住民らの目に映る和盛地区は金正恩の治績ではなく、伏魔殿だ。
300万平壌住民の大多数は、金正恩政権を支える党・政・軍のエリートとその家族だ。ニュータウンに失望したからといって、背を向けはしない。金氏王朝と彼らを3代目の運命共同体として結び付けているものの核心は「配給」だ。平壌で配給制が動いている限り、金氏政権は維持される。このところ平壌では、国営商店・市場に行っても生活必需品を買い求めるのが難しい。電気はしばしば途絶え、油の供給もぎりぎりだ。食料供給だけが辛うじて続いている。これさえも「全ての穀物を平壌に優先供給せよ」という金正恩の特別方針のおかげだ。コロナ封鎖当時よりましになったものはない。全ては金正恩の核への執着のせいだということを、住民らも知っている。そんな金正恩の後ろで虎の威を借る側近たちは、自分たちだけのうたげを開いている。平壌の春はまだ訪れない。
李竜洙(イ・ヨンス)論説委員