韓国の裁判所が加湿器殺菌剤事件の被害者に対する国家賠償責任を認めた。国側の賠償責任が認められた初の判例だ。
ソウル高裁民事第9部(成智鏞〈ソン・ジヨン〉、ペク・スクチョン、柳東均〈ユ・ドンギュン〉部長判事)は6日、加湿器殺菌剤被害者ら5人が国を相手取り起こした損害賠償請求訴訟で、3人に対し300万-500万ウォン(約33万-55万円)の支払いを命じる原告一部勝訴判決を下した。
裁判所は「化学物質の有害性審査・公表段階で公務員の過失があるかどうかを綿密に見極めた結果、裁量権行使が著しく合理性を欠いており、違法だ。結果的に見て、国家賠償請求権が認められる」との判断を示した。
その上で「この事件の化学物質審査段階で、毒性や危害性に対する一般的な審査が評価されたり、安全性が検証されたりしていなかったのにもかかわらず、環境部(省に相当)などは該当物質について、『有毒物質に該当しない』と一般化して公表した。このため、国が安全性を保障できないという結果を生んだ」と述べた。
被害者らは2008年から11年まで加湿器殺菌剤を購入後、使用したことにより、肺疾患などで死亡または治療を受けるという被害に遭ったとして、製造会社と国を相手取り14年8月に損害賠償請求訴訟を起こした。
被害者らが訴訟を起こした相手は、同製品を製造したオキシー・レキット・ベンキーザー (オキシー)や納品会社のハンビッ化学、ロッテショッピング、下請けで自社ブランド(PB)製品を生産したヨンマ産業などだ。
一審判決に先立ち、被害者側とオキシー、ハンビッ化学、ヨンマ産業、ロッテショッピングなどは調停が成立し、これらの会社は訴訟当事者から除外された。その後、製造会社のセピュと国を対象とした訴訟のみが残ることになり、2016年11月、一審はセピュ側が被害者13人に対し5億4000万ウォン(約6000万円)を賠償するよう命じる判決を下した。
ただし、一審は国を相手取った損害賠償請求に対しては証拠不足を理由に原告敗訴判決を下し、これが控訴審につながった。
同日の控訴審で被害者側の一部勝訴判決が出たことにより、加湿器殺菌剤事件で国の賠償責任もあるという初めての判断が示された。これに対し、環境部は「判決文を検討し、関係部処(省庁)と協議した上で、上告するかどうかを決める」との見解を示した。
キム・ミンソ記者