金一族の権力世襲に不満広がる 脱北者調査を基に報告書=韓国政府

【ソウル聯合ニュース】韓国統一部は6日、脱北者6351人を対象に2013年から22年までの間に実施した面接調査の結果をまとめた「北韓経済・社会実態認識報告書」を発刊した。報告書は、北朝鮮住民の間で金一族による世襲的な支配に対する不満が膨らみつつあるとの見方を示した。慢性的な経済難と配給網の崩壊により、市場での食料調達が日常化していることも分かった。 

 これまで脱北者の面接調査結果は「3級秘密」に指定され非公開だったが、指定解除により報告書として公表された。

◇「白頭血統を維持すべき」 割合が低下傾向

 北朝鮮で暮らしていた当時、故金日成(キム・イルソン)主席直系のいわゆる「白頭血統」による領導体系が維持されるべきだと認識していたか尋ねたところ、比較的最近の16~20年に脱北した人の場合、「そうだ(維持されるべきだ)」は29.4%にとどまった。「そうでない(維持されるべきでない)」は54.9%だった。

 一方、00年以前の脱北者は、北朝鮮にいたころに白頭血統の領導体系が維持されるべきだと認識していたという割合が57.3%で、維持に反対する考えだったのは22.7%だった。脱北時期が最近になるほど、脱北前から体制維持に反対する考えを持つ人が増えていることが分かる。

 北朝鮮で暮らしていた時に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)の権力継承が正当でないと感じたとの回答は、16~20年の脱北者で56.3%を占め、11~15年の脱北者の47.9%を上回った。

 統一部は、権力の世襲に対する脱北者の不満度が北朝鮮内の世論とずれている可能性もあるものの、脱北時期別の認識の変化をみると北朝鮮住民の間でも世襲の正当性に不満を持つ人が増えているとの見解を示した。とりわけ、白頭血統を強調する領導体系に対する認識は亀裂が深まっているとした。

◇配給途絶える 食料調達は市場で

 北朝鮮は経済難で多くの餓死者を出した1990年代の「苦難の行軍」以降、配給制が崩壊したままだ。16~20年の脱北者の72.2%は、食料配給を受けた経験が無いと回答した。正式な職場で労賃、食料配給とも受け取れなかったと答えた割合は00年以前の脱北者で33.5%に上ったが、16~20年の脱北者ではさらに高く、50.3%だった。

 それでも北朝鮮で食事は1日3食だったという回答が、00年以前の脱北者で32.5%、16~20年の脱北者は91.9%だった。食料を市場で調達する住民が増えたことが背景にあると分析される。米・とうもろこしの調達方法を尋ねたところ、全体の67.7%が「総合市場(チャンマダン)」で購入したと答えた。この割合は16~20年の脱北者では71.2%を占める。

 全体の93.6%が、北朝鮮で暮らしていたころ「商売をしないと金を稼げない」と考えていたことが分かった。形式は国営企業でも、実質的には個人が賃借するか手数料を受け取って運営する企業が増えている。16~20年の脱北者の認識では、出身地域の国営商店のうち個人が運営する商店は47.9%、国営食堂のうち個人が事実上運営する食堂は57.5%に達した。

◇外国の映像視聴が増加 主に中国の映画・ドラマ

 北朝鮮で生活していた時に外国の映像を視聴したと回答した人の割合は、00年以前の脱北者では8.4%にすぎなかったが、16~20年の脱北者では83.3%と、大きな変化が見られた。「中国の映画・ドラマ」の視聴が71.8%で、「韓国の映画・ドラマ」が23.1%だった。

 市場経済化と外部からの情報流入に対し、金正恩政権は統制を強化している。

 脱北直前の3~4年間で社会の監視・統制が強化されたと回答した割合は、金正恩政権前だった11年以前の脱北者で50.7%だったのに対し、12年以降の脱北者では71.5%と上昇した。

 居住地での監視、家宅捜索を受けた経験があると答えた割合も、00年以前の脱北者は16.4%だったが、16~20年の脱北者は51.3%と半数を占めた。

 今回の報告書は20年までの脱北者の証言を分析したもので、北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境を封鎖して以降の状況は反映されていない。

 深層面接による今回の調査に応じた脱北者は81.8%が女性だった。境界地域の出身者が82.1%で、平壌出身は2.7%にとどまる。年齢は20代が27.9%、30代と40代がそれぞれ26.9%、50代が17.7%。

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