■老朽化した商圏
新村が崩壊した理由の一つは商圏の老朽化だ。同日、名物通りと新村カフェには20-30代よりも40-50代の顧客が多く見受けられた。通りで出会ったある延世大学の学生は「友人たちと会う際は主に延南洞や延喜洞、弘大に行く」とし「行ってみたいと思わせるカフェや飲食店が、今の新村には存在しない」と話した。一帯を見渡しても、糖葫芦(とうころ、タンフールー)と人生4カット(韓国風プリクラ)のチェーン店だけが見られるだけだ。延世大学前でカフェを経営しているAさんは「新村の商圏が大学生の需要を失い、新村セブランス病院を訪れるよそ者の需要に取って代わられた」と話す。
数年前から延世大学が1年生を仁川松島キャンパスに移したことも、新村の商圏が縮小した理由として挙げられる。新入生こそ最も遊びたい時期で、消費が多くなる時期だからだ。延世大学1年のキムさん(20)は「延世大学の仁川松島キャンパスから地下鉄で1駅離れた松島現代アウトレットによく出掛ける」と話した。
このように、若年層が去ったことで、新村一帯は新しい売り場や新しいメニューを試す「テスト・ベッド」の役割を失ってしまった。最近、カナダの国民的コーヒーチェーン「ティムホートンズ」、米国三大ハンバーガーチェーンの「ファイブガイズ」などは、1号店を江南に出している。
■個性も消える
新村商圏の個性が消え、外国人観光客の足取りが途絶えたことも原因として挙げられる。数年前までは新村駅から梨花女子大学につながる通りは、中国人観光客でにぎわっていた。梨花女子大学前で写真を撮り、新村で食事をする人が多かった。「梨花女子大学の前には梨花女子大学の学生よりも中国人観光客の方が多い」という話が持ち上がった時代だ。しかし、中国人観光客はTHAAD(高高度防衛ミサイル)配置問題により姿を消し、その後は新村ではなく聖水洞や清潭洞で多く見られるようになった。梨花女子大学前から新村汽車駅に連なっていたアパレル店舗は、インターネット・ショッピングモールに取って代わられた。大学生のいない大学商圏には、誰も魅力を感じなかった。
■高い賃貸料
商圏の崩壊と反比例している賃貸料も、問題として指摘される。新村は、交通面で肩を並べる所がないほどに優良な商圏だ。そのため、賃貸料が下がらない。空いている所のほとんどが新村駅から延世大学につながる中心的商圏だ。ここ一帯はいまだに賃貸料が最も高い「黄金地帯」となっている。近くの不動産会社の代表は「家賃が月に4000万-8000万ウォン(約440万-880万円)程度」と答えた。会社や法人でなければ手に負えない金額だ。
高金利に物価高、高い賃貸料に耐えられず、店舗が廃業してしまったのだ。延南洞や上水駅の近くのように、こぢんまりとした店舗が新たに店を構えやすい構造でなければならないが、そのようにはなっていない。同代表は「大学前で自炊する大学生たちも近くでデリバリーを中心に食事を賄っている」とし「大学商圏を前面に押し出してはいるものの、いざ大学生たちには無視されてしまう『パッシング商圏』となってしまった」と肩を落とす。
イ・ヘウン記者