OECD加盟国で合計特殊出生率が1.3を下回る国は韓国、イタリア、ギリシャの3カ国だ。イタリアとギリシャは儒教が原因で少子化となった国ではない。原因は文化ではなく社会と経済の仕組みだ。作家のチョ・グィドンは「イタリアに向かう道」で「韓国とイタリアが最下位になった理由はいずれも労働市場の二重構造、大企業の正規職中心の福祉、女性の経済活動参加率の低さと男性の育児不参加などの問題を抱えている点にある」と指摘した。
私はマンソンの見方そのものを批判するためにこの記事を書いているのではない。マンソンは「それでも韓国人が持つ回復に向けた弾力性を信じる」という好意的な言葉で動画を締めくくったが、私はその善意の言葉を疑っていない。世界的ベストセラー作家が韓国の問題に関心を持ちコメントしているが、これはわれわれを自分自身に目を向けさせる点でありがたいことだ。
しかしわれわれが自分たちの問題をそのような形で理解するようでは困る。韓国の問題は儒教が原因でもないし、また資本主義が原因でもない。その核心を一つ挙げるとすれば、「正規職コース」で定年を迎えられない限り、貧困老人に転落しやすい労働市場の二重構造、そしてその中で自らの立ち位置ばかりを追求する既得権勢力だ。貧しい高齢者が保守政党に投票することをばかにし、恨み節を言う高学歴中産階層を団結させる利己心が問題ということだ。
われわれは問題の原因をすでに理解しているが、解決に必要な苦痛からただ顔を背けたいだけだ。今の状態がこのまま続くと本当の改革は始めることさえ難しくなる。国の消滅を回避し、未来を開拓するには苦痛を伴う改革に取り組まねばならない。「断言するが、苦痛を克服する唯一の道は、苦痛に耐える方法を学ぶことだ」というマンソンの言葉が思い起こされる。
ノ・ジョンテ経済社会研究院専門委員・哲学