北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は23-24日、1泊2日の日程で平安南道の妙高山で朝鮮労働党政治局拡大会議を開催し「地方の人民に基礎食品や初歩的な生活品さえ円満に提供できていない。これは党と政府として到底無視できない深刻な政治問題だ」と指摘した。地方における配給制度崩壊の実態を金総書記自ら認めた形だ。金総書記が党政治局会議を平壌の朝鮮労働党庁舎以外の地方で開催するのは今回が初めて。地方の民心がそれだけ良くないためとも考えられる。
【写真】昨年3月、「クリスチャン・ディオール」のフード付きコートで話題になったキム・ジュエ氏
北朝鮮住民が目にする労働新聞の25日付は1面から5面まで金総書記の「妙高山党政治局拡大会議での発言」だけが掲載された。金総書記は「一部の政治指導部署と経済機関は現実的かつ革命的な可能性を見いだせず、言葉でごまかしていた」として幹部らを批判した。金総書記はさらに「条件が有利な幾つかの市や郡にのみ地方工業工場などを建設し、残りの市や郡は今後建設可能な準備やせきたてることに消極的な態度を取った」と述べた。
金総書記は昨年末に開催した最高人民会議に続き今回の労働党会議でも「地方発展20×10」を強調した。毎年20の郡に近代的地方工業工場を建設し、10年以内に全国の北朝鮮住民の基本的な物質文化生活レベルを引き上げるという内容だ。さらに「党中央は地方発展政策執行の定型に関し、道、市、郡の党責任秘書の党性、人民性、責任制を評価するだろう」とも述べた。政治局の担当者らに市や郡を一つずつ担当することも指示した。今後成果がない場合は責任を追及するためだ。
ただし専門家の多くは「この計画が成功する可能性は低い」とみている。工場建設に必要な資材や電力などが絶対的に不足しているのがその理由だ。韓国政府のある関係者は「現実的に達成が難しい目標を提示し、後から幹部らに地方発展が遅れた責任を追及するのだろう」「客観的条件が整えられていないのに、こんな形で成果競争をさせれば逆にさまざまな副作用を招き地方経済はさらに崩壊する恐れもある」と予想した。
北朝鮮では特権階級が集まって住む平壌に道路や住宅、電気などあらゆるインフラが集中している。そのため「平壌共和国」と呼ばれるほど中央と地方の格差が大きい。1990年代の餓死者が続出した「苦難の行軍」と呼ばれる時代に配給システムが事実上崩壊し、その後住民の多くは配給ではなく市場を通じて自力で必要な食料を手に入れてきた。2005年10月に食料配給制正常化宣言が行われたが、その後も配給が通常通りとなったのは平壌など一部地域に限られていた。09年11月の貨幣改革後、計画経済を再開するため配給網の復元を目指したが、この当時も食料の配給は都市の労働者や労働党員のみを中心に行われた。
北朝鮮は今回会議を開催した場所について「妙高山」以外に具体的な言及はしなかった。労働新聞に掲載された写真によると、会場は数百人が出席できる会議場などのある近代的な建物のようだった。過去にこの地域を訪れた韓国政府高官は「妙高山周辺にはかつて金日成(キム・イルソン)が死亡した特閣(最高指導者の別荘、または迎賓館)以外に数百人が滞在できる建物はないはずだ」「この特閣でないのなら、金正恩体制発足後に新たに建設されたのかもしれない」とコメントした。
キム・ミンソ記者、ヤン・ジホ記者