彼らだけだろうか。私たち韓国人の相当数が、いまだに謝罪を渋る。謝罪したら負け、敗者(loser)になると思っているケースが少なくない。英国の元首相、ベンジャミン・ディズレーリ(1804-81)も「謝罪はどうしようもないときにだけやるもの」と言ったのだから。ディズレーリは、しかし、19世紀の人物だ。時代は変わり、今では謝罪をうまくやってこそ勝者(winner)、リーダー(leader)になれる。
世界的な製薬会社、ジョンソン・エンド・ジョンソンのリコール問題は、謝罪で危機を突破した模範例だ。1982年、米国シカゴでタイレノールを服用した患者が亡くなると、当時の米国食品医薬品局(FDA)はシカゴ地域の製品を回収せよと勧告した。だがジョンソン・エンド・ジョンソンは、米国全域のタイレノール3100万錠を直ちに回収した。消費者にテレビ広告でその事実を積極的に告知して謝罪し、毒劇物が混入し得ないように薬の形態をカプセル型からタブレット型に変えた。最低に落ちたタイレノールの市場シェアは、1年たたずして例年の水準に回復した。
韓国のある百貨店グループの事例もある。この会社の大田店アウトレットから出火したのは、一昨年の9月22日午前7時40分ごろのこと。同社の会長は、報告を受けるなり現場に出向き、午後4時ごろ「いかなる責任も回避しない。被害に遭われた全ての方と地域住民の皆さんに、繰り返し謝罪する」と言って頭を下げ、火の手がさらに大きくなるのを防ぐことができた。
『謝罪について(On Apology)』という本を書いた社会心理学者のアーロン・ラザール(Aaron Lazare)は、このように人々を励ましている。「謝罪した後の状況が恐ろしいだろうが、その恐怖は誇張されている場合がずっと多い。変化は、思っているほどではない。羞恥心は、道徳的失敗ではない高潔さの証しとなる。謝罪は傷を癒やすほぼ唯一の方法であることを覚えておこう」
成熟した社会は、そうして私たちを最終的な勝者にするのだ。
宋恵真(ソン・ヘジン)記者