13日に行われた台湾総統選で与党民進党の頼清徳氏が当選した。台湾独立傾向が強い頼氏は5月20日に総統に就任し、蔡英文総統の反中・親米路線を継承することになる。世界各地で重要な選挙が続く2024年に初めて実施された台湾総統選は、頼氏と親中傾向の侯友宜氏(中国国民党)が対決し、自由陣営と権威主義陣営が激突する米中の代理戦として注目された。中国に吸収された香港の中国化を目撃した台湾の有権者は、これまで8年ごとに政権を交代させてきた慣行を破り、頼氏を選んだ。
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選挙結果は中国・ロシアなど権威主義国家が影響力を高める中で自由陣営が「味方」を失わなかったという意味がある。しかし、自由陣営も安易に祝うことはできない。民進党の長期政権に強い不満を持つ中国が現職の蔡英文総統より独立の意志が強い「頼清徳の台湾」に対し、軍事面、経済面で圧力を強化し、台湾海峡に緊張が高まる可能性があるためだ。国際物流にとって重要な中東の紅海やホルムズ海峡で相次いで武力衝突が発生する中、エネルギー輸送ルートである台湾海峡でも危機が発生すれば、韓国経済にも負担が大きくなる。ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの戦争で既に疲れ果てている国際社会で両岸(中台)、ひいては米中の対立がエスカレートし、不安の種が大きくなるのではないかと世界が注目している。
本紙が取材した台湾現地の軍事・政治専門家らは中国がまもなく台湾に対する圧迫に乗り出すと予想した。台湾国策研究院の郭育仁副院長は「台湾海峡の緊張は急速に高まるだろう」とし、「5月の総統就任式まで台湾海峡情勢が揺らぎかねない」と予想した。台湾海峡情勢の行方は最近対話ルートの強化に乗り出した米中関係にかかっているとの見方もある。
専門家は中国の台湾に対する圧迫のタイムスケジュールとして、短期的には3月、5月、10月に注目すべきだと指摘した。3月に中国最大の政治イベントである全国人民代表大会(全人代)と全国人民政治協商会議(全国政協)といういわゆる「両会」で頼清徳政権に対する対応レベルが決定され、そこから5月20日の頼総統の就任直前まで台湾に対する中国の圧迫と脅威が高まるという観測が有力だ。次の転換点は米大統領選挙(11月5日)を控えた10月ごろに開かれる見通しの中国共産党四中全会(中央委員会第4回全体会議)が挙げられる。米大統領選の状況と頼清徳政権に対する初期評価を総合し、今後の台湾に対する圧迫のレベルを決定することになるとみられる。今後の両岸関係とそれに伴う韓国や国際社会への影響について現地専門家に聞いた。
①中国は戦争よりも経済的圧力をかける
ブルームバーグによると、台湾海峡で戦争が起きた場合、国際社会は10兆ドルの損失を受けることになる。ただ、現地の専門家は多くの国の懸念とは裏腹に中台が近いうちに直接軍事的に衝突し、戦争が起きる可能性は低いとみている。中国は国内世論と西側の台湾支持を意識しながら、頼清徳氏を手懐けようとするだろうが、自国の被害も予想される軍事攻撃というカードは最後まで先送りするとの見方だ。淡江大両岸関係研究センターの張五岳所長は「中国は台湾を圧迫するため、戦争ではなく文攻武嚇(言葉での攻撃と武力による脅し)、経済制裁、国内立法(台湾独立阻止法案の改正)という手段を積極的に使う」と予想した。