台湾総統選 「侯友宜が勝てば台湾の武装は弱体化して中国の侵攻招く」 曹興誠UMC元会長インタビュー

 世界の安全保障にとって大きな不確定要素となる台湾総統選が13日に行われる。米中による覇権争いの象徴となった台湾で、親米傾向の与党・民主進歩党(民進党)、親中傾向の最大野党・中国国民党(国民党)のどちらの候補が勝利するかにより、台湾海峡を挟んだ両岸情勢と世界のテクノロジー・貿易・軍事環境が変わるほか、韓半島周辺の安全保障環境も相当な影響を受けることになる。韓日など東アジア諸国だけでなく、世界が今回の選挙に注目している。

【表】台湾総統選 候補者の経歴と対中姿勢

 今月2日までに公表された世論調査によると、政権維持を目指す台湾独立派の頼清徳候補(民進党・現副総統)は、中国の支持に受けて8年ぶりの政権交代を狙う侯友宜候補(国民党・台湾現新北市長)を誤差範囲内の3~5ポイント差でリードしている。世論調査の公表が禁止された選挙戦終盤に入り、民進党と国民党は互いに自分たちが「台湾の守護者」であると主張し、支持を呼び掛けている。大勢を固めたい民進党と終盤の逆転劇を狙う国民党、両陣営の代表的な人物に会い、主張を聞いた。この記事は「台湾半導体の父」と呼ばれる聯華電子(UMC)創業者で民進党を支持する曹興誠元会長(76)のインタビューだ。

 曹興誠元会長は11日、台北市内の台湾大校友会館で本紙のインタビューに応じ、「今回の選挙は民進党と共産党の対決だ」と述べた。UMCは台湾で台湾積体電路製造(TSMC)と並ぶ2大ファウンドリー(半導体受託生産業者)で、世界シェア3位だ。北京で生まれ、1歳の時に台湾に渡ってきた曹元会長は、一時「統一主義者」と呼ばれる親中人物だったが、会長退任(2006年)後の19年に起きた香港民主化運動をきっかけに「反中烈士」に転向した。22年5月には台湾の国防強化のために30億台湾元(約140億円)を寄付すると発表し、同年11月にはシンガポール国籍を放棄して台湾人に戻った。

 以下は一問一答。

-今回の台湾総統選の対決構図は?

 「政権与党の民進党と(国民党ではなく)中国共産党の対決だ。『戦争と平和』の構図ではなく、民主体制と中国の競争だ。中国はまだ台湾攻撃能力を備えていない。中国の習近平国家主席も(昨年11月に)サンフランシスコでバイデン米大統領に会い、「(外部が予想する)2027、35年の台湾侵攻計画はない」と述べた

-国民党の侯友宜候補が当選した場合、どんなことが起きるか。

 「台湾の武装を弱体化させようとするだろう。将来の台湾侵攻を容易にするための段階だ。今回の総統選は台湾の未来と西太平洋の安全・安定にも非常に大きな影響がある。中国は米国と西太平洋を巡り競争しており、台湾海峡を掌握し、第1列島線(沖縄~台湾~フィリピン~マラッカ海峡を結ぶ線で、米国のインド太平洋防衛ラインと一致)を崩そうとしている」

-台湾の半導体サプライチェーン(供給網)も中国が掌握することになるのか。

 「まだ先の話だ。 ただ、国民党が勝てば、漸進的に台湾の安全保障を侵食し、『香港化』を成し遂げるだろう。(半導体企業を含む)台湾のグローバル企業は通常、政府の干渉から自由で、米国に上場しているケースが多く、直接的な内部コントロールを受けない。しかし、台湾で中国発の安全保障リスクが高まれば、米国は結局、台湾の技術の中国への流出を懸念し、制裁を加えざるを得ない」

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  • ▲「台湾半導体の父」と呼ばれる聯華電子(UMC)の曹興誠元会長は11日午前、本紙のインタビューに応じた。/台北=李伐飡特派員
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