「民進党は中国から逃れたい市民にとって唯一の選択肢です。中国共産党は台湾に強い敵意を示しており、人権や人民の権力については無関心です。そんな中国をどうやって好きになれますか」
13日の台湾総統選挙2日前の11日夜9時(現地時間)、台北市内の総統府前で開催された政権与党・民主進歩党(民進党)の遊説に参加したヤン某さん(24)は記者にこのように語った。匿名を求めた40代の女性有権者も同じく民進党支持の理由について「中国が嫌いだから」とはっきり答えた。
この日民進党の頼清徳候補と副総統候補の蕭美琴氏の遊説会場では主催者側の試算で夜9時時点で15万人が集まり大きな熱気に包まれた。支持者らは「台湾の自由を守れ」「民主主義に向かう道、後退してはならない」などのプラカードを掲げ応援に駆け付けた。蔡英文総統が所属する民進党は台湾独立を掲げており、頼候補もこの方針を継承し「反中」を強く訴えている。野党第1党である国民党の侯友宜候補は親中、野党第2党である民衆党の柯文哲候補は中道とされている。
夜9時40分ごろに非常にしゃがれた声でマイクを取った頼候補は反中アイデンティティーを改めて強調した。頼候補は「台湾の選択に全世界が注目している」「世界に向かって行くか、中国に捕らわれるか」「民主的価値を守るか、権威主義に屈服するか」と叫んだ。支持者らが「頼総統、加油(がんばれ)」と叫んでこれに応えると、頼候補は「運命は全面的にわれわれ自らの手に懸かっている」として雰囲気をさらに盛り上げた。
頼候補は遊説会場の凱達格蘭大道について「権威主義に抵抗した歴史の現場」と訴えた。1991年の、中国本土からの独立扇動を処罰する「刑法第100条撤廃運動」、中国と台湾のサービス貿易協定反対を訴える2014年の学生デモ「ひまわり学生運動」、さらにはLGBTプライドパレードなど民主や自由を求める運動がこの地で数多く行われたからだ。頼候補が「凱達格蘭大道は権威主義から民主主義に向かう道だ」「台湾は民主主義のシンボルであり、民主主義の要塞(ようさい)」などと叫ぶと、支持者らは一斉に大声でこれに呼応した。
今回の遊説会場には蔡総統自ら出向き、頼候補を力強く後押しした。蔡総統は「今回の選挙は今年全世界60カ国で行われる選挙の中で最初の選挙だ」「台湾人は民主的自由という普遍的価値が必ず勝利することを改めて世界に証明しなければならない」と訴えた。蔡総統が「民進党が8年仕事ができるようチャンスを与えてくれた台湾人に感謝する」と述べ、5秒にわたり腰をかがめた。すると支持者らは大きな拍手を送った。一部の女性支持者らは「蔡総統、愛しています」と大声で叫んだ。
今回の台湾総統選挙は8年前に蔡総統が初めて当選した当時のように民進党への圧倒的な支持はなく、非常に僅差の争いとなっている。今月2日に台湾聯合報が報じた最後の世論調査では頼候補の支持率は32%で、国民党の侯候補(27%)との差はわずか5ポイントだった。1位と2位の差が誤差の範囲(プラスマイナス2.8ポイント)のため、結果がどうなるかは予想がつかない。民主党の柯候補の支持率は21%だった。
台北=イ・ユンジョン特派員