3日午後2時、石川県輪島市河井町のビル倒壊現場。二日前に能登半島地震が発生した時、7階建てビルが基礎ごと横倒しになっていた。ビルが地盤から引き抜かれ、側面を下にして地面に倒れたような形だった。誰かが風に当たりながらコーヒーを飲んだり、眺めを楽しんだりしていたと思われるバルコニー部分の手すりが地面に迫り、目の前にあった。マグニチュード(M)7.6の大地震が作り出した現実とは思えない光景の中で、命を救うため必死の救助作戦が進められていた。
【写真】地震で倒壊したビルや家屋…本紙東京支局長が撮影した輪島市内の様子
消防隊員3人が横倒しになったビルの下に入り、ドリルでがれきを切断する一方、その周囲では約40人が二次災害など万一の事態に備えていた。現場を見守っていた70代の住民が「ビルが倒れる時、『バタン』ではなく、横にゆっくり倒れた。居酒屋をしているお母さんと息子が下敷きになっている。昨日、娘は幸いにも救出されたが…」と教えてくれた。現場を行き来する消防士たちはマイクを突きつける報道陣の質問に一様に沈黙し、自動車の鋭いクラクション音が静寂を破るのみだった。
静かで平和だった河井町の中心街は、今回の地震により、まるで空襲を受けた戦場のようになってしまった。家屋の半分は倒壊して形を把握するのさえ難しく、がれきが重なり合い、路地のあちこちに山のようになっていた。現在まで確認されている死亡者数は73人。このうち半数以上の39人が河井町のある輪島市の死亡者だ。倒壊した建物の中に人が閉じ込められているという通報が相次ぎ、あちこちで救助作業が進められているが、生存者が救出されたという朗報はあまりない。
救助作業が行われている間、ビルの向こう側から「ビー」という自動車のクラクション音が絶えず鳴り続けていた。地震で倒壊したビルが駐車中の自動車に覆いかぶさり、ハンドルが押されてクラクションが鳴っているようだ。近くを通りかかった住民は「まるで地震警報のようでゾッとする」と語った。その瞬間、周辺一帯が揺れた。余震が来たのだ。