クリスマス当日の25日、ソウル市内の幼稚園で学芸会が行われている。舞台に立った子どもはピアノの伴奏に合わせて歌を歌っている。ところが突然、空襲警報が鳴り響く。母親は幼い娘の手を握って逃げるが、空襲を避けられなかった。母親は頭から血を流した状態で武装した男に拉致される。バイクに無理やり乗せられた母親は子どもを探すが、地面には子どもが着けていた赤い手袋だけが転がっている。
これは、駐韓イスラエル大使館が制作した仮想の動画だ。イスラエルに対するハマスの攻撃を、韓国を舞台にして再現した内容になっている。動画の続きには「皆さんの身にこのようなことが起きたと想像してみてください」と字幕が出て、10月7日のハマスの攻撃を受けたイスラエル国民の被害状況が映し出される。
イスラエル大使館は26日、この動画を「あなたに起こった出来事だと想像してみてください」というタイトルでSNS(交流サイト)に投稿したが、論議を呼んだことから一日後に削除した。
大使館側は報道資料で、動画のリンクとともに「クリスマスのテロ攻撃を扱ったこの動画は、イスラエル人の心情を韓国の国民にもっとしっかり伝えようという意図で制作された」と説明した。
しかし、韓半島の安全保障の懸念を引き合いに出すのは度を越しているとの指摘を受け、大使館は27日、動画投稿からわずか一日で全てのSNSから動画を削除した。
韓国外交部(省に相当)の当局者は「ハマスがイスラエルの民間人にした仕打ちや拉致は正当化できるものではないが、駐韓イスラエル大使館がこれを他国の安保状況に当てはめて動画を制作・配布したのは適切でないと考える」と話した。
さらに「このような我が国の立場を駐韓イスラエル大使館に伝え、イスラエル側は問題の動画を削除した」と説明した。
キム・ジャア記者