【ソウル聯合ニュース】韓国外交部の任洙ソク(イム・スソク)報道官は28日の定例会見で、徴用被害者らが損害賠償を求めた訴訟の上告審で大法院(最高裁)が同日に日本企業への賠償命令判決を確定させたことについて、この訴訟の原告に対しても「第三者弁済」の解決策に従い賠償金を支払う方針を明らかにした。
第三者弁済の解決策は、韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が民間の寄付によって財源をまかない、日本企業に代わって賠償の確定判決を得た徴用被害者らに賠償金などを支払うというもので、政府が今年3月に発表していた。
任氏は「今後も財団とともに被害者、遺族ひとりひとりと会い、さまざまな形で政府の解決策を忠実に説明し、理解を求める努力を続ける」と述べた。
大法院はこの日、徴用被害者の遺族らが三菱重工業と日立造船を相手取って損害賠償を求めた訴訟の上告審で、原告勝訴の判決を言い渡した。日本企業に原告1人当たり5000万ウォン~1億5000万ウォン(約550万円~1640万円)の賠償金支払いを命じた下級審の判決が確定した。
この日の訴訟で勝訴が確定した被害者は17人で、このうち1人は日立造船で労働を強いられた被害者。日立造船を相手取って起こした徴用訴訟で勝訴が確定したのは今回が初めて。
徴用訴訟を巡っては、2018年に大法院で賠償判決が確定した訴訟の原告15人のうち11人が政府の解決策を受け入れ、財団から賠償金と遅延利息を受け取った。今月21日には三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)をそれぞれ相手取って損害賠償を求めた訴訟2件の上告審で原告勝訴の判決が確定し、第三者弁済の対象が11人増えた。この日、確定判決を受けた17人を加えると対象者は計43人になった。
大法院で係争中の徴用訴訟が4件あり、下級審で係争中の裁判を含めれば、被害者の数はさらに増えるとみられる。
韓国政府は対象となる被害者には第三者弁済の受け入れ意思を問う手続きを続けていくとみられるが、問題は支払いのための財源が不足していることだ。財団は鉄鋼大手・ポスコが今年3月に拠出した40億ウォンを第三者弁済の財源としている。ポスコの前身の浦項総合製鉄は1965年の韓日請求権協定で日本の経済協力資金を受けた経緯から財団に合計100億ウォンを拠出する方針を決め、16〜17年に2回にわたり30億ウォンずつ入金し残る40億ウォンを今年3月に寄付した。
外交部当局者は「財源は民間の自発的寄付などを通じて調達し、今後、財団の目的事業と関連した財源を拡充できるよう必要な努力をかたむけていく」との立場を改めて示した。
日本企業は依然として財団への拠出を行っていない。日本外務省は21日と同様にこの日の判決に対しても、在日韓国大使館の次席公使を呼び遺憾を表明し抗議した。
日本は1965年の韓日請求権協定で徴用問題は解決済みとの立場を固守しており、自国企業による財団への寄付については一線を画しているものの、日本側の参加がなければ財団の財源不足により、第三者弁済は続けることが難しいとの見方が出ている。