地域をまたいで通勤する人が多いという理由もある。自宅と職場が同じ地域にある人の割合が最も低いのは、世宗市(56.8%)だった。世宗市の居住者のうち20.9%は大田に、10.3%は忠清南道に通勤していた。世宗に新築マンションなどが建設され、大田や忠清南道など周辺地域に職場がある人たちが世宗に大量に引っ越したことが影響しているとみられる。
このほか、自宅と職場が同じ地域にある人の割合が低いのは、仁川(68.7%)、京畿圏(74.7%)、ソウル(81.4%)だった。京畿圏に自宅がある通勤者の5人に1人(21.5%)はソウルに通勤していた。京畿道竜仁市器興区に住む会社員キムさん(28)は、毎日午前5時30分に起き、直線距離だけで35キロあるソウル・光化門近くの職場まで通勤している。キムさんは「朝10分でもゆっくりしていると、会社に着く時間が20-30分遅くなる」と話した。
■長距離通勤「健康に悪い」
通勤による疲労感は想像以上だ。仁荷大学病院のイ・ドンウク教授(職業環境医学科)の研究チームによると、通勤時間(帰宅所要時間を含む)が一日60分以上の人は、通勤時間が30分未満の人に比べ、うつ病を発症する可能性が1.16倍高いことが分かった。研究チームは「通勤はそれ自体が心理的・肉体的ストレスを誘発するだけでなく、時間的余裕を奪うため、健康に悪い影響を及ぼす可能性がある」と説明した。
2019年に金浦都市鉄道(愛称:金浦ゴールドライン)が開通したのに続き、昨年にはソウル軽電鉄新林線、今年は西海線など新たな交通網が続々と整備されているが、通勤地獄の解消には至っていない。定員の290%を超える超過密ラッシュで悪名高い金浦ゴールドラインは「金浦重病ライン」とも呼ばれている。金浦ゴールドラインで通勤すると、体が衰弱するという意味だ。最近も乗客らが呼吸困難を訴えていたことが分かった。
専門家らは、都心の交通網を大幅に再編する必要があると指摘する。亜洲大交通システム工学科のユ・ジョンフン教授は「韓国国内では今、GTX(首都圏広域急行鉄道)などの鉄道敷設が集中的に行われているが、鉄道は巨額の資金を投じなければならない上、管理も大変だ」として「広域バスを大幅に増やして自家用車で移動する人口を減らさねばならず、そのために通勤バス専用車道を拡大する方策を検討する必要がある」と指摘した。
オフィスが集まるエリアの周辺に、通勤者らが住める環境を整えるべきとの意見もある。漢陽大都市工学科の李昶武(イ・チャンム)教授は「過密開発を懸念して郊外にばかり目を向けるのではなく、ソウルでも職場が密集するエリアの周辺では住居の供給量を増やすなど、(職場への)接近性を高める政策が必要だ」と指摘した。
カン・ウリャン記者、ファン・ジユン記者