廃電池から鉱物、韓国でリサイクル規制緩和

 韓国・全羅北道群山市にある電池リサイクル工場では、電気自動車(EV)の廃電池からモジュールを分離し、細かく粉砕して「ブラックパウダー」に加工している。小麦粉よりもう少し粗い粉末にはリチウム、コバルト、ニッケルなど電池生産に必要な重要鉱物が含まれている。そこに硫酸を注いで溶かすなどすると、同じ鉱物同士が結晶となって分離された。廃電池から原材料を取り出しているのだ。工場関係者は「廃電池は重要鉱物を抽出できるカネの塊だ」と話した。

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 環境部は今月21日、こうした廃電池を「廃棄物」ではなく「循環資源」と見なし、廃棄物関連規制を全面的に緩和すると発表した。EV市場が拡大するにつれ、動力源である電池の製造に使われる鉱物の確保がますます重要になっている。しかし、韓国では電池の材料である重要鉱物の産出がない。中国などはそうした鉱物の輸出を次第に規制している。韓国政府は廃電池リサイクルを増やし、鉱物を確保する「電池循環システム」を構築しようとしている。廃電池や廃家電などから主要金属を取り出して再利用する「都市鉱山」の活性化することが狙いだ。

 環境部は今月末までに廃電池の保管期限を「最大30日」から「最大180日」に延ばす廃棄物管理法施行規則の改正を完了する計画だ。同法で廃電池に例外を設けるのは初めてだ。韓国は2019年、京畿道の「義城ごみ山」問題以降、廃棄物を長期間保管できないよう規制している。廃棄物を購入または受け取った後、30日が経過すると過料に処される。最近韓国企業がEVの廃電池を大量輸入し、鉱物を抽出しようとしたが、廃棄物管理法がネックになった。それがきっかけで環境部は廃電池に限り、保管期限を延長することにしたのだ。廃電池のリサイクルを促進することが目的だ。

 「電池循環システム」は欧州連合(EU)が先に導入した。EUは今年8月、電池法を制定した。表面上の理由は廃電池の有害物質を管理することだったが、実際は重要鉱物を含む廃電池の海外流出を防ぐため、廃棄物として輸出することを困難にしたものだ。EUは27年から「電池パスポート」も導入する。電池の寿命、充電容量、リサイクル資源の含有量などを追跡管理している。韓国もEUのように廃電池を「貴重な資源」と認識し、リサイクルに障害になる規制を一気に緩和した格好だ。

 環境部は海外から廃電池そのものではなく、廃電池を粉砕してブラックパウダーの形で輸入する際に発生する問題も解決する方針だ。最近、ポーランドからブラックパウダーを輸入しようとした韓国企業が、EUの関連廃棄物の移動方法をよく理解していなかったため、困難を経験したケースがあった。環境部は24年からコールセンターを設置し、企業を支援する計画だ。リサイクルの際、経済性が低いためにほとんどが捨てられている中国製電池についても、循環システムをつくっていく予定だ。

 環境部によると、世界の二次電池市場の規模は20年の524億ドルから30年には3976億ドルに拡大すると推定されている。うちEVが83%を占める。廃電池の量が増大することは間違いない。韓国もEVの普及台数が19年の3万5000台から昨年は12万台へと4倍近くに増えた。25年には113万台まで増加するとみられる。

パク・サンヒョン記者

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  • 【写真】全羅北道群山市にある廃電池リサイクル工場で電気自動車用の電池を粉砕した「ブラックパウダー」が袋に詰められている。この粉末からリチウム、コバルト、ニッケルなどを取り出し、電池生産に使用する/韓国環境部

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