ただし報告書は、殺害の主体を「殺気立った群衆」とのみ記し、殺害の容疑者の名前や組織は具体的に記述しなかった。むしろ、在郷軍人会熊谷支部長が、朝鮮人関連の流言飛語を信じる日本人のことを「事理を解せざる蒙昧(もうまい)の徒」と非難する内容を含んでいる。当時、朝鮮人虐殺は各地の在郷軍人会や自警団が主導したものといわれていたが、この地域の在郷軍人会は違った、という説明だ。
毎日新聞は「陸軍省が実態調査をした資料で、当時日本政府が違法な虐殺の事実を認識していたことを意味する」と報じた。この報告書は、陸軍省の副官が1923年11月2日に、大震災と関連がある関東地方の全ての部隊に「同月25日までに陸軍大臣・参謀総長に(大震災関連の)活動内容を報告せよ」と指示したことにより作成された。今回発見された熊谷連隊区司令部の報告書は、時限を過ぎた12月15日に提出された。日本政府内に、全体の実態調査資料が存在する可能性があるのだ。ただし報告書には、朝鮮人保護の責任がある警察の失策を強調する記述が多く、当の陸軍の過ちはほとんど記述していなかった。毎日新聞は「軍が自分たちを美化しているきらいはあるにせよ、警察との温度差は興味深い」と報じた。
現在、日本政府は、関東大震災における朝鮮人虐殺の事実を公式に否認している。今年8月、当時の松野博一官房長官は記者会見で、朝鮮人虐殺に関連して「政府内では事実関係を把握できる記録が見当たらない」という立場を表明していた。今回の文献に関する日本政府の公式な立場まだ出ていない。文献を発見した渡辺さんは「日本人がなぜ朝鮮人虐殺に走ったのか、資料に基づいて全容解明しなければならない。単に集団的な精神異常状態だったとか、権力による虐殺だという陰謀論のような説明では不足」と語った。
成好哲(ソン・ホチョル)記者