【ソウル聯合ニュース】韓国大法院(最高裁)は21日、徴用被害者や遺族が三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)をそれぞれ相手取って損害賠償を求めた訴訟2件の上告審で、原告勝訴の判決を言い渡した。両社に賠償を命じた一審と二審判決が確定した。
今回の訴訟の争点は、被害者の損害賠償請求権が時間の経過により消滅したかどうかだった。
大法院は2012年、日本製鉄を相手取った損害賠償請求訴訟で初めて賠償請求権を認定し、原審判決を破棄して審理を差し戻した。その後、険しい道のりを経て18年に初めて大法院で日本企業への賠償命令が確定した。
日本企業側は、訴訟を提起する権利の消滅時効が成立しているため賠償責任はないと主張した。消滅時効とは、権利を行使しない状態が一定期間継続した場合にその権利を消滅させる仕組みだ。
だが、大法院はこの日、「強制動員の被害者やその相続人には18年に(大法院による別の徴用訴訟の)判決が言い渡されるまでは被告(日本企業)に対し、客観的に権利を事実上行使できない障害理由があった」と判断した。
12年の判決は原審判決を破棄して差し戻す趣旨のもので、当事者らの権利が確定的に認定されたものではなかったとし、「このため、被害者としては12年の判決後も日本企業を相手取った訴訟によって実質的な被害の救済を得られるかどうかについて依然疑念を持ち得た」と説明した。
大法院は18年の判決を通じ、被害者の日本企業に対する慰謝料請求権は1965年の韓日請求権協定の適用対象に含まれないという法的見解を最終的に明確にしたとしたうえで、「18年の判決により、はじめて韓国内で強制動員被害者の司法的な救済の可能性が確実になった」と判断した。
大法院はこの日、下級審の判決で論争を呼んだ「消滅時効の起算点」を12年とすべきか、18年とすべきかについては言及しなかった。一方で、被害者に「権利を行使できない客観的な障害理由」があったと明確にした。
大法院の判例では、客観的な障害理由がある場合に「債務者が消滅時効の完成を主張することは信義誠実の原則に反する権利乱用であり、許されない」としている。少なくとも、18年10月30日の大法院判決までは日本企業が消滅時効の完成を主張することが認められないと大法院が認定したことになる。このことは、各級の裁判所で係争中の同種の訴訟の多くに影響する可能性がある。
今回の判決確定により、三菱重工業と日本製鉄は原告1人当たり1億ウォン~1億5000万ウォン(約1100万円~1600万円)の賠償金と遅延損害金を支払わなければならない。確定した賠償金は総額11億7000万ウォンとなる。ただ、18年に確定した判決による賠償命令も履行しておらず、日本企業による直接的な賠償が行われる可能性は低い。
日本製鉄を相手取った訴訟は原告7人が13年3月に起こした。7人は太平洋戦争中の1942~45年に徴用され、日本製鉄の前身企業の製鉄所で働かされた。三菱重工業を相手取った訴訟は1944年から45年にかけ、同社の名古屋工場で働かされた被害者3人と遺族1人が2014年2月に起こしていた。2件の訴訟の一審と二審はいずれも原告の請求を認め、日本企業に賠償を命じた。裁判が10年近く続き、訴訟を起こした被害者は全員が亡くなった。