■中国の北海艦隊をけん制する役割は可能
だが、これに関連して韓米が協議している事案や韓国政府・軍の対応方針が具体的に分かったケースはまだない。ちょうど11月、世宗研究所では「中国の台湾侵攻と韓半島核戦争の可能性への備え」などをテーマに、韓米日の専門家らが出席する国際セミナーが開かれた。セミナーで専門家らは、米中間の台湾海峡戦争が起きた場合、今年1月に米CSISの報告書が明かしたように、米国が勝利するとしても多くの犠牲が生じる「ピュロスの勝利」になる可能性が高く、この過程で北朝鮮が攻勢的に動く可能性に備える必要性を提起した。
日本の政策研究大学院大学の道下徳成副学長は、台湾事態の発生時に米国が韓国に要請することがあり得る分野として、非戦闘員の後送作戦、F16・F35など米戦闘機の再給油と維持補修のための後方支援、情報・監視・偵察(ISR)支援などを挙げた。
山東半島の青島から台湾海峡に向けて出動する中国北海艦隊のけん制役を、韓国が遂行する必要がある-という主張も提起された。キム・ジヨン海軍士官学校教授は「韓国海軍が南方へ航行する北海艦隊と並んで済州島海域まで移動しつつ、北海艦隊の動向や規模、戦時態勢などを米国および友邦国に伝えれば、北海艦隊の奇襲効果を下げることができるだろう」と述べた。国策研究機関のある専門家は「台湾事態での在韓米軍の介入および米国の支援要請への対応問題は、都合の悪い事案だからと目を背けるのではなく、むしろ急いで多様なシナリオ別に韓国の方針を定め、米国と事前協議する必要がある」と語った。
〈中国が台湾武力統一を行う三つの状況〉
■中国のさまざまな台湾侵攻シナリオ
中国は2005年の「反国家分裂法」において、武力で台湾を統一する三つの状況を定めた。
第一は「台湾独立」勢力が何らかの方式や名目で、台湾を中国から分離しようとするとき。第二は、台湾を中国から分離しようとする重大な事件が発生したとき。第三は、平和統一の可能性が完全に消えたときだ。
これに基づいて、さまざまな中国の台湾武力統一、すなわち台湾侵攻シナリオが提起されている。中国専門家のチョ・ヒョンギュ韓国国防外交協会中国センター長の分析によると、ロイター通信が2021年に専門家へのインタビューや関連報告書などを基に、台湾侵攻の6段階シナリオを提示した。第1段階は、中国が台湾周辺の領空・領海を侵犯するなどの「グレーゾーン」戦略で、第2段階は、中国本土に近い台湾の馬祖島・金門島の占領に至る。第3段階は台湾に対する部分的封鎖、第4段階は台湾の完全封鎖だ。第5段階は、台湾の主な電力施設およびインフラに対するミサイル攻撃、最終第6段階は大規模な上陸作戦および空挺(くうてい)部隊の投入となる。
台湾国防部(省に相当)は、中国がミサイルで台湾のレーダー基地および指揮所などを破壊することから上陸作戦に至る4段階シナリオを提示した。中国は合同火力作戦、合同封鎖作戦、合同攻撃作戦(上陸作戦)の3段階計画を立てたといわれている。だが全面的な武力侵攻は、中国としても損失とリスクが大きいだけに、全面戦に代えて艦艇や軍用機、ミサイルなどを動員して台湾の港や領空を全面封鎖する戦略を選ぶ可能性が高い-という見方もかなりある。
ユ・ヨンウォン記者