米国のトランプ前大統領が来年の大統領選挙で当選し再び政権の座に就いた場合、核凍結と経済制裁緩和を「ディール(取引)」する方向で検討を行っているという。米国の政治専門メディア「ポリティコ」が13日(現地時間)に報じた。第2次トランプ政権が「外交治績」を残すため非核化交渉の目標を「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)」から「核凍結」に引き下げる可能性があるという意味だ。トランプ氏はこの報道について「事実無根」として否定したが、その一方でワシントンの政界関係者の間では「前回のトランプ政権でも政府周辺では北核凍結が交渉案として何度も浮上した。そのためこれはいつ現実になってもおかしくないシナリオだ」とも語られている。
【写真】北が「通常角度でICBM発射」と脅した日…韓半島周辺に米F22とB52
ポリティコは同日、トランプ氏の対北朝鮮政策構想について説明を受けた3人の関係筋の話として「北朝鮮が核開発を中断し、その検証を北朝鮮が受け入れた場合、北朝鮮に対する制裁を緩和して経済支援を提供する方向でトランプ氏が検討している」と報じた。ポリティコは「トランプ氏は金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の説得を放棄する準備ができているかもしれない。それは核兵器を解体するよう説得することの放棄だ」「核兵器関連の対話に時間を浪費せず、より大きな問題、つまり中国との競争に集中するためだろう」と予想した。
ポリティコが今回報じた「北核凍結シナリオ」とは「北朝鮮が現在と未来の核開発と生産を中断する見返りに、過去に開発した核兵器は認める」というものだ。北朝鮮はプルトニウムを少なくとも70キロ確保したと言われている。これは核兵器を最大で18個製造できる量だ。ポリティコは「トランプが対北朝鮮制裁を緩和すれば、韓国や日本などの同盟国、そして北朝鮮に対してさらに強硬な対応を求める共和党関係者を不安にさせるかもしれない」と指摘した。ワシントンのある外交・安全保障筋は「米国が『核凍結』を宣言した場合、これは北朝鮮を事実上核保有国として認めることを意味する」「韓国だけが北朝鮮の『核の人質』となるリスクがある」と指摘した。
トランプ氏が「北核凍結案」を検討する理由は、その任期序盤の段階で北朝鮮との合意を引き出すためとみられる。別の関係筋は「トランプは(北朝鮮との)ディールを望んでいるが、いかなる種類のディールをしたいかはまだ十分に考えていないだろう」との見方を示した。北核に伴う脅威の根本的な除去は難しいため、核凍結と制裁緩和で決着をつけ、この未完成の合意を「平和の達成」という治績とすることに集中する可能性があるとの見方だ。ポリティコは「そうなれば韓国が独自の核武装に乗り出すリスクが出てくる」と予想した。
この報道についてトランプ陣営のスティーブ・チョン報道官は「(ポリティコが話を聞いたという)『関係筋』は自分たちが何を語っているのか理解していない」「(彼らは)トランプ前大統領とトランプ陣営の代弁人ではない」と批判した。トランプ氏もSNS(交流サイト)で「ポリティコの報道はフェイクニュースだ」とする一方で「その記事でただ一つ正しいことは、私が金正恩氏とうまくやっているという点だけだ」とコメントした。
ワシントン=イ・ミンソク特派員