しかし、誰でも簡単にフェイク写真・動画の制作ができるようになった時代に、現在の通報処理基準では、悪意を持ってフェイク写真や動画を作って通報する人を見分けることができないとの指摘もある。特に、写真や動画ファイルに含まれるメタデータの情報を書き換えるアプリは、インターネットで容易に入手できる。権益委の関係者は「この事件の調査で、通報者が実際に写真や動画を捏造した可能性があるかについては検証しなかった」と話した。
行政安全部と地方自治体、警察は、秩序違反行為の通報のほとんどを「安全申聞鼓」と「スマート国民提報」というモバイルアプリで受け付けている。通報者が違法行為の種類、違法行為があった日時と場所を入力し、写真や動画など根拠となる資料を提示すれば、担当の公務員が確認して違反者に過料を科す。このとき通報者はアプリに内蔵された写真・動画の撮影機能を使わなければならない。証拠資料が捏造されたり汚染されたりする可能性を防ぐためだ。それ以外の方法で撮影した写真・動画を証拠として提出する場合、その写真・動画の中に、撮影時間が分かる内容が含まれていなければならない。例えば、ドライブレコーダーの映像の中にある撮影時刻の数字表示は効力があるとして認められる。一方、メタデータに記録された撮影日時や場所は、それだけでは証拠として認められない。
裁判所では、「デジタルフォレンジック」などの厳格なチェックを経て「内容が捏造されていない」と確認できたデジタル資料の証拠能力だけを認めている。韓国政府の関係者は「現在、過料を賦課する時の写真・動画の認定基準は、通報者が資料を捏造した可能性を念頭に置いて制定した基準ではないと考えなければならない」とした上で「だからといって、過料が数十万ウォン(約数万円)にとどまる事件にまで『デジタルフォレンジックを経た資料だけ認める』とは言えないと思う」と話した。
キム・ギョンピル記者