「金建希夫人を捜査せよ」 北機関紙にプラカード掲げた秋美愛元法相の写真

 北朝鮮の住民が読む朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は12日付紙面で、秋美愛(チュ・ミエ)前法務部(省に相当)長官の写真を掲載した。

【写真】12日付「労働新聞」に掲載された秋美愛元法相の写真

 労働新聞は6面に、韓国で数日前に行われた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領退陣デモの写真十数枚を掲載。このうち1枚は秋美愛元法務部長官が「特級犯罪者 金建希(キム・ゴンヒ)特検(大統領夫人を特別検事捜査せよ)」と書かれたプラカードを手に笑顔でデモをしている写真だ。秋元長官は今月9日、ソウル・漢南洞の大統領公邸近くで行われた尹大統領弾劾及び金建希氏の捜査を求める集会に参加した。集会は進歩系の市民団体「ろうそく行動」が主催したものだ。秋元長官のほかにも、金民雄(キム・ミンウン)教授、郭魯炫(クァク・ノヒョン)元ソウル市教育監(教育長に相当)らがデモに参加し、竜山の大統領室に向かって行進しながらシュプレヒコールを上げた。関連報道の写真は複数枚インターネット上で公開されている。

 北朝鮮の労働新聞に掲載された写真は、韓国メディアの報道写真を無断で使用したものとみられる。労働新聞は連日、新聞の6面に大統領の弾劾要求集会とデモの写真を複数掲載しているが、写真の引用元は表記していない。北朝鮮は韓国メディアの報道写真を無断で使用しながらも、自国メディアの写真およびデータは無断での掲載を禁じている。

 北朝鮮は2018年から、労働新聞のPDFサービスを有料化しており、労働新聞から委任されて著作権を管理する日本のある企業に購読料を支払った場合に限り、PDFサービスの利用を認めている。労働新聞がPDFサービスを有料化する以前は、同紙のホームページからその日の紙面を無料でダウンロードすることができた。労働新聞のPDF代行サービスを行う日本のある企業は、PDFサービスを有料化した当初、ホームページに「労働新聞のPDFデータおよび写真データを無断で転用するケースがある」として「紙面記事の内容の一部あるいは全部を事前に当社の書面同意なしに印刷・刊行物への転載およびインターネットのホームページなどに掲載することや、放送などに利用することはできない」と告知している。

 北朝鮮の住民が目にする新聞に、韓国の大統領の弾劾を求める集会の写真が掲載されていることをめぐっては、北朝鮮当局の意図とは逆の効果を誘発する可能性があるとの分析も聞かれる。大統領を引きずり下ろそうとか、拘束せよなどと書かれた写真を連日目にする北朝鮮の住民たちが、「韓国と北朝鮮では体制が異なると」思い始める可能性がある、というわけだ。脱北者の一人は「北朝鮮の住民が、韓国で指導者を引きずり下ろそうとデモをしている姿を見ながら、自分たちもあんなふうにできたらいいのに、と考えないはずはない」として「『国民が指導者を引きずり下ろすことができる』などと考えること自体が困難な北朝鮮の体制で、むしろ北朝鮮の住民が思いもよらないことを考える可能性もある」と指摘した。

キム・ミンソ記者

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  • ▲写真=秋美愛(チュ・ミエ)前法務部長官/NEWSIS
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