今回の誘致合戦で韓国政府はレッドチームを設置していたのだろうか。大統領が声高に何かを言えば、全員が沈黙していたのではないのか。万博だけではない。ソウル江西区長選挙でも、長官候補指名者の辞退騒動でも、10人のうち9人が「イエス」と言う中で残りの1人が無条件で「ノー」と言って理由を冷静に説明していれば、大惨事のような結果は免れたはずだ。
どんなに有能な集団でも、常に合理的な決定ができるわけではない。息の合った組織であればあるほど、集団思考の過ちに陥りがちだ。「集団思考」と「希望的観測」が重なれば、情報判断はでたらめになる。ソウル大、海外の博士、法曹界出身者の多いこの政府で、「ノー」といえるレッドチームは稼働しているのだろうか。レッドチームを初めて考案したのは米国陸軍だという。上下関係が厳しく、意思決定の構造が閉鎖的であればあるほど、レッドチームが必要だ。そのような組織では反対意見を出しにくいからだ。不利益を被らずに反対の声を上げられるシステムが必要なのだ。
総選挙が近づいている。今の政府・与党は前政権のように現金をばらまくことはできない。教育・福祉・労働・環境などの分野の革新的政策を掲げて票を獲得しなければならない。北朝鮮も「想定外」の方法で挑発してくる可能性がある。万博と同じようにしていれば、再び失敗する。政策を立てるときも、選挙に臨むときも、誰か1人が必ず「ノー」と言うレッドチームを設置してはどうだろうか。
アン・ヨンヒョン記者