中国から来た「謎の物乞い」にタイ社会が騒然となっている。体の一部がひどく損傷した物乞いたちが、11月中旬からタイの街角の至る所で金品を要求しているのだ。事態を受けて警察が捜査に乗り出したが、この物乞いたちは皆、中国出身という共通点があることが分かったのだ。一部では人身売買の可能性も取りざたされているが、現地の警察は人身売買の疑いは見当たらないとの立場だ。
バンコク・ポストやタイの公共放送PBSなど現地メディアが11月30日(現地時間)に報じたところによると、「謎の人物」が目につくようになったのは11月10日ごろから。彼らには共通点があった。顔や手足がひどく損傷しているという点だ。SNS(交流サイト)には一般市民が撮影した写真が多数投稿されているが、物乞いたちの体には至る所にやけどや傷の痕があるのがはっきりと分かった。手足のない人や、原型が分からないほど顔がゆがんだ人もいた。
歩くことすら困難にみえるこの人たちが街に出た理由は「物乞い」だった。皆同じようにバッグやプラスチックの箱を持ち、バンコクで市民に対して金品を求めた。「永登浦区立図書館」とハングル文字で書かれたエコバッグを手に物乞いをする人もいた。
物乞いが違法とされるタイで、傷だらけの体で金品を要求する姿に、タイの市民らは一斉に「怪しい」との反応を示した。通報も何件かあったという。結局、タイの警察が取り締まりに乗り出し、男女6人が逮捕された。取り調べの結果、怪しい物乞いたちの国籍は中国だと分かった。物乞いたちは警察に対し「中国で火災によってひどいけがを負い、タイに渡って自発的に物乞いを始めた」「中国では物乞いは違法ではないので、やってはいけないことだとは知らなかった」などと話しているという。物乞いで一日に最大1万バーツ(約37万ウォン=約4万2000円)を稼いでいたことも分かった。
物乞いたちにはさらに怪しい点があった。皆、同一の「中国語通訳者」とつながっており、マンションやホテルなどに一緒に宿泊していたのだ。これについて、インターネット上では人身売買の疑惑まで取り沙汰されている。ネット上では「中国のギャングが健常な人を誘拐し、体に傷を負わせた上でタイにカネを稼ぎに行かせている」「国際的な人身売買組織が関わっている」「拷問や脅迫を受けて、物乞いを始めたのではないか」などの書き込みが見られる。
しかし、現地の警察は最近、物乞いらに人身売買の疑いはないとの結論を下した。自発的に街に出て物乞いをしているというのだ。物乞いとつながっているという「中国語通訳者」については「体の不自由な中国人を利用してカネを稼いだという明確な証拠がまだ見つかっていない」と説明した。このため、タイの移民当局は物乞いをした中国人6人を国外追放処分にするとともに、10年間のタイ入国禁止という措置を取った。
今回の騒動で、中国人観光客に対するタイ政府の政策を批判する声も上がっている。観光客の入国条件を大幅に緩和したため、身元がはっきり確認できない中国人まで次々とタイに入国しているというわけだ。タイはこれに先立ち、経済と観光産業の回復に向けて、9月末から来年2月まで中国人観光客のビザなし入国を認めた。最近では中国人観光客を安心させてさらに大勢の観光客を誘致するとして、主な観光都市に中国の警察を配置することを決めている。
パク・ソンミン記者