習近平主席は14年以降、9年も韓国を訪問していない。その間、韓国からは朴槿恵(パク・クンヘ)、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がそれぞれ3回、2回訪中した。1992年に両国が国交正常化した後、こんな不均衡はなかった。習主席の訪韓は、2016年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備決定を契機として悪化した両国関係の転換点になるという面から、肯定的なことであるのは確かだ。
問題は、中国がこうした韓国の希望をよく分かっていて、習近平訪韓を外交の武器にしているということだ。習近平訪韓の可能性をちらつかせ、中国に対し言うべきことを言えなくする戦略だ。習主席は11月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、米・日の首脳とは会っておきながら、韓国の尹大統領とはわざと会わなかった。これは「価値を引き上げる」戦術とみるべきだ。
中国の事情に詳しい人々は、習主席がすぐに訪韓する可能性が高いとはみていない。韓国政府は、中国の李強首相が出席する韓中日3カ国首脳会議でもまずは開催しようと、今年ずっと骨折ってきたが、中国側は依然としてぐずぐずしている。韓国は2025年、20年ぶりにAPEC開催国となるが、習近平主席はこの時にようやく訪韓を検討するとみている人も多い。
習主席の「訪韓検討」の一言で魂を売り、低姿勢に出れば、中国の欺瞞(ぎまん)戦術にやられてしまいかねない。文在寅・前大統領は中国を重視し、就任後わずか半年で急いで中国を訪問した。中国を「高い山の峰」と褒めたたえた彼に返ってきたのは、「北京一人飯」と、中国外相が目下の人間に対してやるように腕をぽんぽんたたく「冷遇」だった…ということを覚えておく必要がある。
李河遠(イ・ハウォン)記者