【パリ聯合ニュース】2030年国際博覧会(万博)の開催国を決める博覧会国際事務局(BIE)の総会が28日にフランス・パリであり、加盟国による投票の結果、サウジアラビア(開催地リヤド)が開催国に選ばれ、韓国(釜山)は苦杯をなめた。韓国は政府と地方自治体、民間が一丸となり、約500日にわたり地球495周分に相当する距離を移動しながら各国に支持を訴え、終盤ではサウジを猛追した。この日の総会では決戦投票まで持ち込む戦略だったが、サウジに予想以上の大差をつけられた。誘致競争に出遅れた上、サウジのオイルマネーが厚い壁となって立ちはだかった。
総会での投票でサウジは119票、韓国は29票、イタリア(ローマ)は17票を獲得。3分の2以上を集めたサウジが開催国に選ばれた。
韓国が30年万博誘致を目指し官民合同の釜山万博誘致委員会を立ち上げたのは昨年7月。競合国に比べ遅いスタートだった。その上、広く支持が見込まれる宗教や地域的なつながりといった大きな基盤がなく、序盤では劣勢との見方が大半だった。だが政府と企業は一体となって巻き返しを図る。優勢とされるサウジを徐々に追い上げ、ラストスパートをかけた。
韓国政府の誘致活動を振り返ると、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が首脳会談や国際行事などを機に釜山支持を訴えたのは約90カ国・地域の500人以上に上る。国賓訪問などで直接足を運んだ国も10カ国以上。今年6月にパリで開かれたBIE総会にも駆け付け、釜山誘致へ自らプレゼンテーションに臨んだ。
韓悳洙(ハン・ドクス)首相は約90カ国・地域の150人以上に釜山支持を要請した。特に9月以降はひと月に2回以上の外遊をこなし、BIE加盟国を訪れては釜山をアピールした。過密スケジュールの中、正式な面会を調整できなかった加盟国の高官には空港で、時には移動中の航空機内で説得に努めた。
尹大統領と韓首相は各国の首脳クラスに対し電話でも支持を働きかけた。外交部や産業通商資源部、国土交通部など関係官庁の長官・次官は海外出張のたびに釜山PRに注力した。
韓国の誘致活動では、民間企業の積極的な協力も目を引いた。韓首相と共に釜山万博誘致委員会の共同委員長を務めた大韓商工会議所の崔泰源(チェ・テウォン)会頭(SKグループ会長)は約180カ国・地域の900人を超える高官と面会。6月のBIE総会には、足首のけががありながらも松葉づえをついて出席する姿が見られた。
サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長、現代自動車グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長、LGグループの具光謨(ク・グァンモ)会長、ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)会長ら主要グループのトップもそれぞれ時間を見つけては海外に出向き、釜山をPRした。
官民の総力を挙げた誘致活動の結果、終盤には「わずかながら劣勢」まで持っていくことができたという分析もある。9月以降、韓国はパリに設けた拠点に官民の関係者が随時集まり、交渉の結果を報告したり新たな情報を交換したりしながら相乗効果を生み出した。
BIE内部の雰囲気の変化も感じられるようになったと、韓国政府関係者は伝える。これにサウジも一層気を引き締め、双方の誘致争いは激しさを極めた。
開催国は無記名の電子投票により決まるが、サウジは念を入れ、自国を支持する国に対し投票者を駐パリの大使でなく本国から派遣するよう要請した。韓国側が接触した国と人物を調べ出して圧力をかけたこともあったとされる。
韓国もサウジの攻勢にしかるべく対抗したという。両国は相手の動きをにらみつつ、支持を奪われたならば奪い返す神経戦を展開した。
投票直前まで、韓国側には「1回目の投票で決まらず決戦投票まで持ち込めば勝算はある」との期待もあった。ところが実際にはサウジの得票数が圧倒的だった。
韓国より先に誘致活動に乗り出し、潤沢な資金力を生かしたサウジから票を奪うにはさまざまな面で限界があったといえる。サウジがアフリカなどの途上国に対する開発援助を公言した点も韓国には不利に働いたとみられる。