「遭難者に帰順の意思なし」 韓国メディア報道を通じて北に伝達 

ホットラインは北朝鮮が6カ月前に遮断

 北朝鮮は29日、東海の北方限界線(NLL)近くで10日間漂流し、韓国海軍が発見した北朝鮮船舶を当日深夜にえい航していった。韓国軍合同参謀本部は事件当日から国連軍司令部や国際商船共通網、さらに韓国メディアを通じて北朝鮮船舶に帰順の意志がないことを伝えていた。その結果、北朝鮮は遭難した船舶を無事連れ戻すに至った。

 韓国軍は軍用ホットライン、韓国政府は南北共同連絡事務所チャンネル通信ラインを北朝鮮といつでも連絡を取り合えるように運用している。ところが北朝鮮が今年4月7日にこのどちらも何の説明もないまま一方的に断ち切ってしまったため、今回「メディアによる報道」という3番目の手段を急きょ使ったのだ。韓国軍と韓国政府による「南北ホットライン」が使用可能であれば、今回のようにメディアを動員する必要はなかった。

 ある韓国軍筋は30日「韓国軍は国連軍司令部と国際商船共通網を通じて29日午後からずっと北朝鮮船舶の遭難を伝えようとしたが、北朝鮮からは何の応答もなかった」と明らかにした。国際商船共通網は公海上でさまざまな国の船舶が互いに交信可能な共通のラジオ周波数などを使ったチャネルだ。韓国軍合同参謀本部が同日午後2時16分ごろに北朝鮮船舶を発見し、午後5時40分に韓国国防部(省に相当、以下同じ)担当記者団を通じてメディアにこの事実を公表した結果、北朝鮮は一連の事実を具体的に把握し、警備艇などを送って救助作業に行ったのだ。この韓国軍筋は「北朝鮮は真っ暗な深夜にもかかわらず警備艇を送り、NLL周辺から船舶を連れ帰った。これは昼間に韓国軍が国連軍司令部や国際商船共通網を通じて連絡した際、一連の事態がしっかりと伝わらなかったということだ」と指摘した。

 合同参謀本部が今回メディアに一連の情報を伝える際にも「北朝鮮船舶の乗組員らは北朝鮮に戻ることを希望している」とのメッセージを強調したという。彼らが帰順を求めたと誤解され、北朝鮮の保安当局から不当な処罰を受けることがないよう、これを事前に防止したのだ。今月24日にNLL南側で保護された北朝鮮船舶とは異なり、今回の乗組員らは帰順の意志がないことを明確に伝えてきたという。これを受け韓国軍もその求めに応じてチョコバーや飲料水などを提供し、救助だけを行った。

 韓国軍や海運業界などは「南北のホットラインを一日も早く復旧させるべきだ」と一致して声を上げている。これを一方的にストップしたのは確かに北朝鮮だが、それをただ手をこまねいて見ているのではなく、韓国政府として最低限の通信手段を確保する努力を積極的に進めてほしいということだ。韓国海洋連盟のある関係者は「もし韓国漁船が遭難し、NLLの北側で漂流したらという反対の状況を想定してほしい」とした上で「韓国側は人道支援を行ったが、北朝鮮はそうはしないだろう。戦争中であっても対話は必要だ」と訴えた。対北朝鮮政策の原則は維持しながら、さまざまなケースを想定し一つか二つは連絡ルートを確保すべきということだ。韓国国防部や韓国統一部などによると、北朝鮮は30日にも東海と西海の軍ホットラインや南北共同連絡事務所からの定期的な呼びかけに応答しなかったという。今年4月以降、連絡を取り合えない状態が半年以上続いているのだ。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者

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  • ▲南北の通信連絡ホットラインが復活した2021年7月、西海地区のホットラインで試験通話を行う韓国軍兵士/韓国国防部

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