高校の同窓生C氏としばしば、彼の家でビールを飲む。味の好みが似ているからだが、日本のビールにフライドポテトを添えて飲むのを特に好む。あえて日本のビールなのは、ドライでほろ苦い日本ビール特有の味を好んでいるからだ。日本語で「辛口」と表現しているその味だ。少し前にも一緒にビールを飲んだが、彼が「ノー・ジャパン」の話を切り出した。韓国で「ノー・ジャパン」の気運が盛んな時期、コンビニから日本のビールが全て消えて残念に思っていたという。「このごろはどのコンビニに行っても売ってるね」という彼の言葉に、あらためて感じるものがあった。
これまで抑え込まれていた需要が爆発しているのか、今年に入って日本のビールの販売量は急増し、輸入ビールの販売量トップを奪還した。何もビールだけではない。一部の日本のウイスキーを巡っては「オープンラン(開店前に列に並ぶこと)」まで起きている。今年の初めには『THE FIRST SLAM DUNK』をはじめとする日本のアニメ作品が韓国の劇場街を席巻した。それに便乗した日本文化ブームを懸念する声が強かったのも事実だ。
こうした現象を主導しているのは当然、若い層だ。若者の日本に対する拒否感が既成世代に比べて薄いのは、幼いころから頻繁に接していたからだろう。上の世代に『SLAM DUNK』『ドラゴンボール』があったように、われわれの年頃の者には『ワンピース』と『鋼の錬金術師』があった。これらの漫画から派生した流行語は、今もなお用いられている。中には、既成世代の目で見ると理解し難いであろう作品もある。日本の説話を借用してもいる忍者武侠(ぶきょう)漫画『NARUTO -ナルト-』が代表的だ。日本少年漫画の全盛期だった2000年代に青少年期を過ごした今の30代だけを取り上げてみても、こうした文化は決して異質なものではない。
日本文化に対する広い包容力は、経済的・文化的なものと政治的・歴史的なものは分離すべきだという認識につながる。例えば、大正時代の剣士が主人公の漫画『鬼滅の刃(やいば)』に熱狂している韓国の青年の中に、その時代の日本で湧き上がっていた軍国主義を称揚する人はいない。兄妹間の友愛だとか勧善懲悪といった、人類普遍の感情に魅力を感じているだけだ。おかげで『鬼滅の刃』劇場版は、パンデミックという時局の中でも実に215万人を動員した。