海兵隊で訓練してこそ成績が良くなるという大韓体育会長【記者手帳】

 記者会見の終わりごろのことだった。10月8日、大韓体育会の李起興(イ・ギフン)会長は、中国・杭州で開かれた第19回アジア競技大会(2022/杭州。2023年開催)の決算の席で突如「もう本当に、パリ五輪まであまり残ってない。来年1月には国家代表全員が海兵隊の訓練を受ける予定」と発言した。笑いながらの発言だったので、ジョークなのか本気なのか判別し難かった。

 韓国は過去の国際総合スポーツ大会で不振続きだった。10月8日に閉幕した2022/杭州では中国(金201個)、日本(金52個)に次ぐ総合3位(金42個)にとどまった。2018年のジャカルタ・パレンバン大会(金49.3個)時より金メダルの数が少ない。このジャカルタ・パレンバン大会で韓国は1982年のニューデリー大会以来、36年ぶりに金メダル50個未満を記録し、今回の2022/杭州が2度目だ。先の東京2020オリンピック(2021年開催)での順位は16位(金6)だった。16年のリオデジャネイロ・オリンピックでは8位(金9)だったのに、垂直落下した。

 順位よりも流した汗の方が重要とはいうものの、大韓体育会は、流した汗と同じくらい多くのメダルを収穫することを考えるべき段階だ。スポーツ科学技術の向上、生活スポーツ人口の増加など、さまざまな方法論が出ている。だが大韓体育会のトップは、だしぬけに「海兵隊での訓練」を語る。

 会長だけではない。張在根(チャン・ジェグン)アジア大会選手村長は大会の1カ月前から、深夜0時から早朝5時まで選手村内のWi-Fiを切らせた。寝る時間にはスマホを使うな、というわけだ。一般的には、睡眠を十分取ることの方が無論良い。だが深夜までトレーニングをした後、早朝にちょっとスマホを見たりした方がいい選手もいるだろう。選手の体質に合わせてやる方法を見つけるのがスポーツ科学だ。鎮川選手村では、科学の代わりに全体主義を選んだ。さらにひどいことに、大会まで1カ月を切ったところで早朝練習と山での駆け足を復活させた。選手村長は「泰陵に選手村があったころに抱いていた熱い心と執念をつくるため」だと言った。

 この方面では、北朝鮮に並ぶ国はない。何であろうと「精神力があればできないことはない」という国だ。熱い心だけで成績が出るのであれば、北朝鮮が全種目で優勝したはずだ。だが北朝鮮は今大会の間、常に審判を押しのけ、スタッフに拳を振り上げるなど横暴な振る舞いばかりを見せた。技量の向上なく精神力だけを強調すると、こういう結果になる。

 日本は、アジア大会では韓国より1ランク下だった。1994年の広島大会を除くと86年から2014年の仁川大会まで、韓国に押されていつも3位にとどまっていた。08年の北京五輪、12年のロンドン五輪でも日本は韓国より順位が下だった。日本は精神力を強調するのではなく、11年から5年単位のスポーツ基本計画を作った、15年にはスポーツ・青少年局から格上げされたスポーツ庁が陣頭指揮を執って選手育成システムを確立した。はるか遠いものだった成果は18年から表れ始めた。ジャカルタ・パレンバン大会で韓国を上回り、東京2020オリンピックでは金27個を獲得して総合3位に上った。

 その間、韓国は選手村で早朝にWi-Fiを切断し、山の駆け足を復活させた。そして今度は海兵隊で訓練するという。寒い季節に重さ140キロのボートを持って走らねばならない選手たちがどう思うか、気になる。

イ・ヨンビン記者

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  • ▲写真=李起興(イ・ギフン)会長。/NEWSIS

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