日本の各メディアは、ジャニー喜多川氏の件に対する日本社会の「暗黙的隠蔽(いんぺい)」が続いた結果、被害者が多ければ1000人に達するとの見方を示している。米国で「希代の性的搾取犯」として事実上の終身刑となった映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの被害者数は約100人だった。
なぜこのようなことが起こりえたのだろうか。ジャニーズ事務所は非上場企業で売上は公開されていないが、年間1000億円以上稼いでいると日本のメディアではみている。日本の主なバラエティー番組や音楽番組、広告にはジャニーズ事務所所属タレントがほとんど出演しており、事実上、日本の芸能界をほぼ独占していると言ってもいい状況だ。このため、業界関係者たちがジャニー喜多川氏の性的搾取を知りながらも、ジャニーズ事務所という巨大な文化権力に屈し、これに口を閉ざしてきたという見方が多い。視聴率が収益に直結するテレビ局などの立場では、最高の人気を誇るジャニーズ事務所所属タレントを出演させなければならなず、同事務所に否定的な報道をすれば「(所属タレントを番組出演させないなどの)報復性ボイコット」に遭う危険性が高いということだ。
権力に歯向かわずに順応する日本の「沈黙文化」も、ジャニー喜多川氏の醜悪な行動が半世紀以上繰り返される背景にあった、という声もある。朝日新聞が「MeToo運動(性犯罪被害告白運動)」の真っただ中だった2017年末、読者を対象にしたアンケートによると、「日本社会は、セクハラ(性的嫌がらせ)などの性被害について、声を上げやすい社会だと思いますか?」という質問に93%が「そう思わない」「どちらかというとそう思わない」と答えた。 ある日本人ジャーナリストは「日本社会では、ジャニーズ事務所の没落が確実になった今になって『なぜ私たちは彼の性的搾取を黙認したのか。惑わされていたようだ」と言う人が多い。ジャニーズ事務所が常に、どこにでもあったため、その世界が崩壊するという考え自体をしていなかったようだ」と語った。
藤島ジュリー景子氏の後を継ぎ、同事務所所属の3人組アイドルグループ「少年隊」メンバーだった東山紀之氏が新社長に就任したが、同氏もまた過去にジャニー喜多川氏のジャニーズJr.性的虐待に加担していたという疑惑が浮上している状況だ。性犯罪者だと結論が出た創業者の名前を冠した「ジャニーズ事務所」という社名を維持するとした決定に対しても、「なぜ性的搾取犯の名前を使い続けるのか」と激しい批判の声が寄せられている。
キム・ドンヒョン記者