中国、留学生・朝鮮族団体を使って対韓世論工作…THAAD・福島汚染水問題で活発に活動

 先に2016年7月、THAAD配備を巡る韓中の対立が頂点に達した際には、在韓華僑・留学生・言論関係者などおよそ100人が集まって「両国間の友情を破壊するもの」「韓国を火薬庫にする行為」という反対声明を出した。ここには昨年、ソウル市松坡区のある中華料理店を「秘密警察署(国外違法警察組織)」として運営した疑いをかけられ物議を醸した人物も名を連ねていた。この時期を前後して、韓国国内の中国留学生が数多くメディアに出てきて「THAAD配備は米国の中国封鎖」「韓国にとっても脅威であって、米国だけが利益を得る」という主張を繰り広げた。こうした世論戦の裏には中国当局レベルの工作活動支援があると、韓国の情報当局では把握している。米国相手に展開する覇権競争に死活を懸けた中国は、親米系諸国に対する心理戦および工作を拡大しているが、とりわけ親米同盟の「弱い環」と評価されてきた韓国が集中的な標的になったものとみられる。

 中国の影響力工作は、20代・30代の反中感情が高まっている韓国国内の状況に合わせて進化している。中国に対する否定的認識を改善するため親中インフルエンサー集団をそろえ、フォロワーが数万-数十万に達するソーシャルメディアのアカウントを通して中国文化をPRするよう仕向けているのだ。この過程で、自国のイメージ改善のための通常のPRにとどまらず、北東アジアのあらゆる歴史を中国の歴史とする東北工程流の歪曲(わいきょく)なども現れており、情報当局が注視している。中国は、未来世代の親中化を狙って韓中間の映画共同製作を進めており、パンデミック後には複数の地方政府が直接乗り出して韓国の青少年を対象とする招請プログラムの開設を考慮している。丁酉(ていゆう)再乱(慶長の役)に明の援軍として参加したトウ子竜将軍と朝鮮水軍の李舜臣(イ・スンシン)将軍を共同で追悼する事業を模索するなど、歴史を活用した影響力工作も盛んだ。

 在韓中国大使館は、在外公館の中では異例にも2020年から「韓中最高位過程」を運営して韓国国内メディアの主導層に自国の立場を伝え、中国に友好的な世論を造成する窓口となっている。韓国国内の主な大学に設置されている中国教育部(省に相当)傘下の「孔子学院」も、影響力工作の先兵に挙げられる。米国・英国など相当数の西側諸国では「安全保障上の脅威」を理由に孔子学院の閉鎖に乗り出した。外見上は語学など中国関連の教育を行っているかのように見えるが、実際には中国現地から派遣された教職員が情報収集、中国人学者・留学生の監視など、事実上のスパイ活動を行っているという。他方韓国には、アジアで最も多い24カ所の孔子学院が存在し、「無風地帯」となっている。相当数の大学が孔子学院の運営予算の大部分を中国に依存しているため、その分、中国政府が深く関与できる構造になっている。大学生らに月額30万ウォン(現在のレートで約3万3000円。以下同じ)から160万ウォン(約17万7000円)ほどを支給し、中国語大会の入賞者に中国での就職を餌にアプローチするといわれている。

金隠仲(キム・ウンジュン)記者

【表】中国の主な影響力工作

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  • ▲2014年9月、全羅北道のある大学で「孔子学院」開設を記念して額を掛ける式典が行われている様子。/写真=聯合ニュース
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